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2012年02月26日

独学院 接盗品等に関する罪から

参りましょう。

<盗品に関する罪>

 盗品その他財産に対する罪にあたる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処せられる[256条1項]。
 上記の物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処せられる[同条2項]。

≪盗品に関する罪の本質について≫

 盗品等に関する罪は、犯罪の被害者による被害物の追求回復を困難にする行為を罰するものである。すなわち、被害者の追求権を保護することを、その本質とする[追求権説]。
 もっとも、盗品等に関する罪は、本罪の犯罪を助成し誘発させたり、その分配にあずかるという意味で、「事後従犯的性格」を併せ持っていると解されている。

<盗品関与罪の主体>

 「本犯の正犯者[共同正犯者を含む。]」がみずから盗品等を処分するなどしても、不可罰的事後行為として罰せられなり。
 これは、本犯[窃盗罪]によって、盗品等の処分についても違法評価し尽くされており、新たな法益侵害がないと考えれられるからである。

<出題例>

 他人から宝石を預かっている者と共謀して当該宝石を処分することとし、自己において買受けた場合→盗品等に関する罪は成立しない。本犯の正犯者[共同正犯者を含む。]がみずから盗品等を処分するなどしても、不可罰的事後行為として罰せられない。

★これに対し、「本犯の教唆犯や幇助犯」が、窃盗犯人から盗品等を譲り受ける等の行為をすると、窃盗罪の教唆犯・幇助犯のほかに、盗品等に関する罪も成立する。
 窃盗教唆罪・幇助罪によって、その後の盗品等の処分まで違法評価し尽くされているとは言い難いからである。そして、教唆犯又は幇助犯と盗品等に関する罪とは併合罪[45条]。

 他人に窃盗を教唆し、その結果窃盗を実行した者から窃取した財物を買受けた場合→窃盗教唆罪と盗品等有譲受罪が成立し、両罪は併合罪[45条]となる。

<窃盗品等に関する罪の客体>

 盗品等に関する罪の客体は、「盗品その他財産に対する罪にあたる行為によって領得された物」であり、被害者が法律上追求することのできる物でなければならない[追求権説による説明]。

<客体〜財産犯によって領得された財物でなければならない>

 本罪の客体は、「財産に対する罪」、つまり窃盗罪、強盗罪、詐欺罪、恐喝罪又は横領罪によって領得された財物である。
 したがって、財産罪「以外」の犯罪の客体である偽造文書、偽造貨幣、賄賂、密輸品、賭博によって得た金銭、偽証の謝礼等は、盗品等に関する罪の客体とはなりえない。[超重要]

<客体〜本犯との関係>
「a」 本犯の行為は「構成要件該当性」「違法性」の要件を充たしていればよい。「有責性」の要件を欠く場合、刑が免除される場合、控訴事項が完成して起訴されない場合でもよい。条文上、「財産犯に『当たる』行為」とあるのは、その趣旨である。
 例えば、14歳未満の刑事未成年者[責任無能力者]によって盗まれた自動車も、「盗品」にあたる。

<出題例>

 親父から盗んできた物であることを知って、これを質受した場合→盗品保管罪[256条2項]が成立する。この場合、被害者が本犯者の直系尊属であるから、本犯者は「刑を免除」される[244条1項]。この刑法244条は「一身的処罰阻却事由」であって、本犯の行為は「構成要件該当性・違法性」に欠けるわけではない。

[b] 本犯は「既遂」に達していなければならない。例えば、窃盗を決意した者に依頼されて、その者が将来摂取すべき財物の売却をあっせんするしても、盗品有償譲受罪は成立しない。

<出題例>

 友人から窃盗の意思を打ち明けられ、盗品の買い取りを約束した場合→盗品等に関する罪は成立しない。本犯である財産犯が「既遂」に達していないからである。

<客体〜被害者が法律上追求することのできる物でなければならない>

 本罪の本質は「被害者の追求権を侵害すること」にあると解されている。よって、被害者が盗品等に対する法理上の追求権を失ったときには、本罪は成立しない。
 例えば、本犯の被害物が即時取得、添付などの対象となったときには、その物について盗品等に関する罪は成立しなくなる。

[a] 即時取得との関係

・「盗品や遺失物」については、第三者がその物を即時取得[民192条]した場合でも、盗難
・遺失の時から2年間は被害者がその物の回復を請求できるので[民193条]、被害者がこのような追求権を行使できる間は、本罪の客体となるとされる。

・「横領罪の被害品」については、第三者が即時取得した場合、2年間の回復請求の定め[民192条]は適用されない。即時取得によって被害者は追求権を失い、本罪の客体にはならない。

<出題例>

 横領罪の被害者が第三者により即時取得された場合には、これにより被害者の当該被害物に対する追求権は失われるから、以後、盗品等に関する罪は成立しない。→「横領罪の被害物」だから、民法193条の回復請求を問題にする必要はない。

[b] 被害者が取消権を行使する以前であっても、盗品等にあたる。

 本犯の行為が詐欺・恐喝の場合には、その盗品等の所有権は一応犯人に移転し、「取り消すことができる」にすぎない[民96条1項]。被害者が取消権を行使する以前には、その財物は「盗品等」にあたらないとも思える。
 しかし、被害者が取消しの意思表示をする以前にも、「取消権を行使した場合には、原状回復請求権を行使することができるという可能性」があり、その「可能性」を含む意味での法律上の追求権が認められることから、その物は盗品等に「あたる」と解されている。

<出題例>

 「本犯が詐欺罪の場合、欺罔による財産移転の意思表示を取り消す前には、被害者は、当該財産に対する追求権を有しないから、盗品等に関する罪は、成立しない。」というわけではない。→取消前であっても、回復を請求する「可能性」はあり、その可能性を含む意味での追求権は認められるから。

<盗品等の同一性>

 盗品等に関する罪の客体である「盗品等」は、被害者の追求権の及ぶものでなければならない。「盗んだ自動車を換金して得た金銭」などのように、「盗品等がその同一性を失った場合」には、被害者の追求権が及ばなくなるから、盗品等に関する罪は成立しない。

 しかし、「金銭などのように代替性を有するもの」については、それ自体が所有権の対象となるのではなく、金額又は一定の数量として所有権の対象となると解されており、例えば、盗品である金銭を両替して他の金銭に換えても、盗品性は失われないと解されている。

≪盗品等との同一性が失われる場合≫
・盗んだ金銭→カレーライスを御馳走
・盗品→金銭に換金
≪盗品等との同一性が失われない場合≫
・横領した紙幣→両替して得た金銭
・詐取した小切手→現金化して得た金銭

<出題例>

 本犯の被害物が同一性を失った場合には、被害者の当該被害物に対する追求権は失われるから、本犯の被害物の売却代金である金銭の贈与を受けても、盗品等に関する罪は、成立しない。→本犯の被害物の売却代金である金銭は、もはや本犯の被害物との同一性を失っているから、「盗品等」にはあたらない。

 「本犯の被害者が同一性を失った場合には、被害者の当該被害物に対する追求権は失われるから、本犯の被害物である紙幣を両替していた金銭の贈与を受けても、盗品等に関する罪は、成立しない。」というわけではない。→金銭を両替して得た金銭は、「盗品等」にあたる。

※ポイント
 「物→¥金銭」では盗品性「なし」、「¥金銭→¥金銭」、「小切手→¥金銭」では盗品性「あり」

<盗品等に関する罪の行為>
[1]「無償で譲り受け」るとは、代価を支払わないで取得することをいう。「単なる約束」では足りず、「盗品等の引渡し」が必要である。

[2]「運搬」とは、委託により盗品等の所在を移転することをいう。

★判例は、窃盗の被害者に警察への通報を断念させた上で、金銭を出させて盗品を被害者宅まで運搬した事案において、盗品の運搬は窃盗犯人の利益のためにその領得を継受したものであるとして、盗品等運搬罪の成立を認めた。

 追求権説に従えば、被害物を本犯の被害者宅に運搬している以上、被疑者の追求回復を困難にするものではなく盗品等に関する罪は成立しないとも思える。
 しかし、盗品が被害者宅に戻っても、その返還が犯人の利益のためになされた時には、「正常な回復ではない」から、盗品等に関する罪が成立すると解されている。

[3]「保管」とは、委託を受けて盗品等を保管することをいう。有償・無償を問わない。当初は盗品等であることを知らなかったものの、後に盗品等であることに気づいて保管を続けた場合には、それ以後について盗品等保管罪が成立する。

[4]「有償で譲り受け」るとは、代価を提供して取得することをいう。有償取得の契約を締結するだけでは足りず、「盗品等の引渡し」が必要である。

★盗品と知りつつ買受けた場合であっても、被害者に返還する目的で買い取った場合には、本罪は成立しない。

<出題例>

 被害者に返還する目的で、盗品と知りながこれを買い取った場合、盗品等に関する罪が「成立しない」。

[5]「有償の処分のあっせん」とは、盗品等について売買、交換、質入等、有償的処分をあっせんすることをいう。処分については有償であることを要するが、あっせん行為自体は有償でなくてもよい。
 あっせんをした事実があれば、あっせんにより売買等の契約が完成しなくても、盗品等有償処分あっせん罪は成立する。

※判例は、「本犯の被害者」を相手方として本犯の被害物の有償処分のあっせんをする場合であっても、「被害者による盗品等の正常な回復を困難にするばかりでなく、窃盗等の犯罪を助長し誘発するおそれのある行為であるから、刑法256条2項という盗品等の「有償の処分のあっせん」に当たる」とした。

<親族間の犯罪に関する特例>

・「配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する。[257条1項]
・「前項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。」[257条2項]

≪本条の趣旨≫

 配偶者や親族等が身内の財産犯人のために盗品等の処分を行うことは無理からぬ面があるので、期待可能性が減少することを考慮して、一身的に刑の免除を定めた者であると解されている[「一身的処罰阻却事由」という。]。

≪親族関係は、誰と誰との間にあればよいのか≫

 本特例は、一定の親族関係にある者は、本犯者を庇護したり、またその利益に関与することは無理からぬ面もあるとして定められたものであるから、そのような関係が認められる場合、すなわち、「盗品等罪の犯人」と「窃盗罪等の本犯者」との間に親族関係があった場合に適用されると解されている。
 典型的には、息子が盗みを働いてきた場合に、その息子をかばうために母親が盗品の処分をするといった場合である。

※これに対して、「盗品等罪の犯人」と「本犯の被害者」との間に親族関係があることを要すると解する見解もある。
 しかし、この見解は、「盗品等罪の犯人と被害者が親族関係にあることは偶然的である。」と批判される。

つづく・・・
posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 19:29| Comment(0) | 刑法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月25日

独学院 背任罪から

参りましょう。

<背任罪>

 他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる[247条]。

 例えば、銀行の支店長が、回収の見込みがないまま無担保で勝手に多額の融資をした場合には、背任罪が成立する。本罪の本質は、このように他人のための事務処理者がその「本人との信任関係に違背して」他人の財物を害する点にある。

 信任関係に違背することを本質とする犯罪であるという点では、委託物横領罪[252条1項]と共通する。横領罪と背任罪をいかに区別するかについては、争いがある。

<背任罪の構成要件>

 背任罪が成立するためには、@「他人のためにその事務を処理する者」が、A「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で」、B「その任務に背く行為をし、」、C「本人に財産上の損害を加えた」ことが必要である。

@「他人のためにその事務を処理する者」・・・背任罪の主体
A「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で」これを「図利[とり]加害目的」という。
B「その任務に背く行為をし」・・・「任務違背行為」
C「本人に財産上の損害を加えた」こと

<背任罪の主体>

 背任罪の主体は、「他人のためにその事務を処理する者」である[身分犯]。

・犯罪行為が行う事務は、「他人の事務」であることを要し、「自己の事務」について背任罪が成立することはない。

≪他人の事務の例≫

・抵当権設定者が抵当権設定登記に協力すべき義務
・運送業者の運送物保管義務など。

<自己の事務の例>

・売買契約に基づく売主の目的物引渡義務、買主の代金支払義務→これらを履行しなくとも、債務不履行となるだけで背任罪は成立しない。

「事務を処理する者」というためには、行為者と本人との間に「信任関係」があることを要する。

<背任罪の行為>

 本罪の行為は、「任務に背く行為」をすることである。信任関係に違背する一切の行為をいう。

<背任罪の主観的要件>

 本罪の故意は、自己の行為が任務違背にあたること、本人に財産上の損害を与えることの表象・認容である。また、、故意のほかに「自己もしくは第三者の利益を図る目的」があることが必要である[目的犯]。一般に、これを「図利加害目的」という。
 たとえ任務違背があっても、もっぱら本人の利益を図るために行っていた場合には、背任罪は成立しない。

<財産上の損害>

・背任罪は「全体財産に対する罪」であると解されており、被害者の全体財産が減少しなければ背任罪は成立しない。
 よって、一方でマイナスがあっても、他方で対価が支払われる等のプラスがあり、全体としてマイナスにならない場合には、本罪は成立しない。

・背任罪の成立要件である「財産上の損害」の有無は、「法的に」ではなく「経済的に」判断される。
 例えば、取締役が金銭貸付けを行った場合、会社は一応貸付金債権をもつ。この場合、一応、「権利」は存在するのだから、「法的損害」は発生していないとみることもできる。しかし、それが回収困難な不良貸付であったときは、その貸金債権の経済的実価は低いので、「経済的損害」が生じたとみることができる。この場合、背任罪の成立要件である「財産上の損害」が発生したと認められる。

≪財産上の損害が発生したとみうる例≫

・回収困難な不良貸付
・違法・不当な貸付
・担保権の喪失など
・XがAのために抵当権を設定したが、その設定登記をする前に、Bのために抵当権を設定し先に登記を済ませてしまうこと[「ニ重抵当」という。]

<横領罪と背任罪の区別1>

 背任罪と横領罪は、いずれも信任関係の違背という点で共通する。
 ただ、横領罪の客体となるのは「自己の占有する他人の財物」に限られ、財産上の利益については、横領罪は成立し得ず、背任罪は成立しない。このことは当然である。

 これに対して、「他人のために事務を処理する者が、自己の占有する他人の財物を不法に処分した場合」、横領罪と背任罪の両方が成立するように思える。この場合に横領罪と背任罪のどちらが成立するのかという点が争われている。

 判例は、次のように分けている。

[1]行為者が本人の利益を図る目的であった場合→無罪
[2]行為者が自己又は第三者の利益を図る目的であった場合→本人名義か、行為者名義かで分ける。
・「自己又は第三者の利益を図る目的」で「自己名義」であった場合→横領罪
・「自己又は第三者の利益を図る目的」で「本人名義」であった場合のうち、
@本人の計算であった時→背任罪
A自己の計算であった時→横領罪

<例> Y銀行の銀行員Xが次のような行為を行った。
・「Y銀行の利益のために」Aに融資を行った。→無罪
・「自己の利益のために」、「X名義」で融資した。→横領罪
・「自己の利益のために」、「Y銀行名義」、「Y銀行の計算」で融資した。→背任罪
・「自己の利益のために」、「Y銀行名義」、「X自身の計算」で融資した。→横領罪

※「○○の計算で」とは、その行為による経済的効果が○○に帰属することを意味する。

<横領罪と背任罪の区別2>
<出題例>

 甲が、個人的な債務の弁済のため、自己が代表取締役をしている会社名義で債権者乙あての約束手形を振り出し、乙に交付した場合

 →横領罪は成立しない。「個人的債務の弁済のため」なので、「自己の利益のために」の場合である。「会社名義」の場合でもある。また、会社名義で約束手形を振り出しており[=会社が振出人]、会社が手形金支払債務を負うのであるから、「会社の計算」による場合でもある。

つづく・・・
タグ:刑法各論
posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 11:52| Comment(0) | 刑法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月24日

独学院 横領の罪から

参りましょう。

<横領の罪>

 刑法典には、横領の罪として、横領罪[252条]、業務上横領罪[253条]、遺失物等横領罪[245条]の3つが規定されている。

 このうち、横領罪と業務上横領罪は、他人から委託された物の占有者だけが犯すことのできる罪であって[真正身分犯]、委託者との間に委託信任関係のあることを前提とする。両者を併せて、「委託物横領罪」という。
 これに対し、遺失物等横領罪は、委託者との間に委託信任関係が無い場合である。

 委託物横領罪が遺失物横領罪に比べて重く処罰されるのは、「委託物横領罪が委託信任関係を破壊するからら」であると解されている。

 横領の罪は、自己が占有する他人の財物に関する犯罪であることから、占有を保護法益とすることは考えられず、「所有権その他の本件」が保護法益である。

 本罪は、他人から預かって占有している財物に関する犯罪である。他人の占有を侵害しない点において、窃盗・強盗・詐欺・恐喝等の各罪と異なる。
 横領の罪には、未遂犯処罰規定は設けられていない。行為者が横領行為を開始すれば、直ちに既遂となるからである。

<横領罪における占有>

 横領罪の客体は、「自己の占有する他人の財物」である。
 横領罪の「占有」は、窃盗罪の「占有」とは、問題となる場面が異なる。

窃盗罪の「占有」→「行為者による侵害の対象となる被害者の支配」
横領罪の「占有」→「行為者による濫用の対象となる行為者の支配」[=「濫用のおそれがある支配力」]

 このように、両罪の「占有」はそれぞれ問題となる場面が異なるため、それぞれの意味も異なり、横領罪の「占有」には、物に対する「事実上の支配」だけでなく、「法律上の支配」も含まれると解されている。この点で窃盗罪の「占有」よりも「広い」

窃盗罪→事実上の支配
横領罪→事実上の支配+法律上の支配

≪横領罪における「占有」が認められるとされた事例≫
[1]横領罪における不動産の占有

●登記済み不動産について、原則として、登記簿上その不動産の名義人となっている者に属する。
●「土地所有者から、その所有土地に抵当権を設定してほしいと依頼され、登記済証、白紙委任状等を交付された者」には、「占有」が認められる。

[2]横領罪における銀行預金の占有
 銀行預金の占有は、預金者にあると解されている。

<委託信任関係>

 委託物横領罪は、「委託信任関係を破ること」に本質がある。「委託信任関係を破らない」横領には、遺失物等横領罪が成立する。

・委託に基づいて占有している他人の物を領得       委託物横領罪
・委託に基づかないで占有している他人の物を領得    遺失物等横領罪
・だれも占有していない他人の物を領得           遺失物等横領罪

 「委託信任関係」は緩やかに解されており、「当事者間の契約の効果として何らかの法的義務を負う関係があれば足りる」と解されている。
 例えば、売主Xが第1買主Aに甲土地を売却した後、自己に登記名義が残っているという場合、Xには、Aとの「『委託信任関係』にもとづく占有」があると解されている。この場合、Xには、売買契約にもとづいて甲土地の登記名義をAに移転すべき法的義務があるからである。

<出題例>

 甲が、乙所有の未登記建物につき、無断で甲名義に所有権保存の登記をしたうえ、丙に売却した場合でも、横領罪は成立しない。
→横領罪は成立しない。甲乙間には「委託信任関係」が存在しないからである。

 Aは、Bから所有建物を買い受けて所有権移転登記をした後、売買契約を解除されたが、建物の登記名義をBに戻す前に、Cから金員を借り入れるに際し、その建物につき、Cに対して抵当権を設定したうえ、その旨の登記をした。
→Aには横領罪が成立する。「委託信任関係」は緩やかに解されており、「当事者間の契約の効果として何らかの法的義務を負う関係があれば足りる」と解されている。
 本問のAは売買契約の解除に基づき建物の登記名義を戻す法的義務を負うので、AB間には「委託信任関係」が認められる。

<他人の物>

 横領罪の客体は、「他人の物」であることを要する。もっとも、自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられたものは、横領罪の客体となる。

<自己の物か他人の物かが問題となる事例1>
[1]ニ重売買
≪事例≫
 売主Xが第1買主Aに甲土地を売却した後、Xは、自己に登記名義が残っているのをよいことに、Xが第2買主Bに甲土地を売却して登記名義を移転した。
→売買契約の成立によって甲土地の所有権は「X→A」に移転しているから、甲土地は、Xにとって「他人の物」となる。

[2]金銭その他の代替物
 
 民法上、金銭については、所有と占有が一致するとされ、金銭の占有が移転すれば、その所有も移転するとされる。そうだとすると、金銭については、「自己の占有する他人の物」はあり得ないことになり、横領罪は成立しないことになると思える。

 しかし、「封金」については、受託者に占有が移転しても、その所有権は委託者に残る[=「他人の物」にあたる」と解されている。

 判例は、「使途を定めた金銭」についても、その所有権が委託者のもとに残る[=「他人の物」にあたる]と解している。

<不法原因給付物>

 委託者が不法な原因に基づいて給付した物を受託者が横領した場合に、横領罪が成立するか。この場合、給付物は「不法原因給付物」にあたるので、受託物には給付物の返還義務はないが、それでも「他人の物」にあたるのかという問題である。

・「委託者は返還請求をすることはできない→しかし、依然として給付物の所有権を失っていない」と考えると、給付物は受託者にとって「他人の物」にあたる。
・「委託者は返還請求をすることはできない→その反射的効果として、不法原因給付物の所有権も受託者に移転する」と考えると、給付物は受託者にとって「他人の物」にあたらない。

 判例は、公務員への贈賄を依頼されて金銭を預かった者が、その金銭をほしいままに領得したという事例において、委託者は返還請求をすることはできないが、依然として給付物の所有権を失っていないとして、横領罪が成立するとした。

※ 最高裁は、横領罪成立説をとっている。しかし、その後、民事事件において、不法原因給付物の所有権は受託者に移転すると判示した。そのため、最判S23.6.5の結論も覆されるべきだとする考え方もある。
 これに対して、刑法上の他人性の解釈は、必ずしも民法上の所有権概念と一致させて考える必要はなく、刑法上はなお「他人の物」と認めることができると解して、横領罪の成立を肯定する学説もある。

<出題例>

 甲が、乙の依頼により公務員丙に賄賂として渡すために預り保管中の現金を丙に渡すことなく自ら費消した場合には、横領罪が成立する。

<「他人の物」〜その他の事例>
<出題例>

 Aは、Bからその所有建物を買い受けて所有権移転登記をした後、売買契約を解除されたが、建物の登記名義をBに戻す前に、Cから金員を借り入れるに際し、その建物につき、Cに対して抵当権を設定したうえ、その旨の登記をした。
→横領罪が成立する。売買契約の解除によって、所有権はBに復帰するから、甲土地はAにとって「他人の物」にあたる。

<横領行為>

 横領行為とは、自己の占有する他人の物について不法領得の意思を実現する一切の行為をいう。
 横領罪の「不法領得の意思」とは、「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思」をいう。
 法律的処分[売買など]だけではなく、事実的処分[持ち逃げ等]も含まれるとされる。

※【参考】学説の対立
「横領」行為の意義をいかに解するかについては、領得行為説(通説・判例)と越権行為説が対立する。
≪領得行為説≫・・・不法領得の意思を実現する一切の行為・・・横領罪の成立要件として不法領得の意思が必要
<越権行為説>・・・委託信任関係を破ってその権限を超える行為・・・成立要件として不法領得の意思は不要

≪横領行為にあたるとされる事例≫
・自己の占有する他人の物の売却、贈与、質入れ
・自己の占有する他人の不動産への抵当権の設定
・他人から預かった金銭の使い込み、持ち逃げ、着服、隠匿
・自己の占有する他人の物を自己の物だと主張して他人に民事訴訟を提起する行為
・登記簿上自己が所有名義人となって預かり保管中の不動産につき所有権移転登記手続請求の訴えを提起された場合に、自己の所有権を主張・対抗する行為

<横領行為〜出題例>

 Aは、Bから依頼されて、B所有の土地につき登記簿上の所有者名義人になってその土地を預かり保管中、Bから所有権移転登記手続請求の訴えを提起された際に、自己の所有権を主張して抗争した。
→横領罪が成立する。判例は、登記簿上自己が所有権名義人となって預かり保管中の不動産につき所有権移転登記手続請求の訴えを提起された事案において、自己の所有権を主張・抗争する行為について、不法領得の意思の発現「=「横領」にあたる]として横領罪の成立を肯定した。

 Aは、B所有の未登記建物を、Bの同意の下に使用支配していたところ、その建物につき、自己名義で所有権保存登記をした。
→横領罪が成立する。未登記不動産の占有は、事実上それを管理支配している者に属するので、本問の未登記建物の占有はAに属する。そして、他人所有の未登記建物について、自己名義で所有権保存登記をすることは、不法領得を実現するもので「横領」にあたる。

<故意・不法領得の意思>

 横領罪の故意は、自己の占有する他人の物[または公務所から保管を命ぜられて占有する自己の物]を横領[処分]することの表象・認容である。また、故意のほかに、「不法領得の意思」も必要であると解されている。

 判例は、横領罪で要件とされる「不法領得の意思」とは、「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物について権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思」をいうとする。

※窃盗罪等で要件とされる「不法領得の意思」とは、内容が異なる。

<横領罪の共犯の成否>

 すでにAに売却し、代金全額の受領がされている不動産につき、売主はその事情を秘して、さらにBに売り渡し、その旨の登記を経由した。この場合、Bが契約の時点で、すでにAに売却されていることを知っていたとしても、Bには横領罪の共犯は「成立しない」。

 売主の行為は典型的な二重売買である。売主には横領罪が成立するが、第2売買の買主であるBにも、その共犯が成立するのか。

 民法上、第2売買の買主が単にニ重売買の事実を知りながら購入したとしても[単純悪意者」、先に登記を具備すれば、第三者に対し、不動産の所有権を対抗することができる[177条]。
 このように「民法上適法に」取得することができる場合に、これを「刑法上違法」と評価することはできないから、第2売買の買主Bがニ重売買の事案について悪意であっても、横領罪の共犯は成立しないと解されている。
 したがって、Bについては、横領罪[252条1項]の共犯は成立しない。

※なお、仮に第2売買の買主がいわゆる「背信的悪意者」として民法上保護を受けないときは、刑法上、横領罪の共同正犯ないし教唆犯が成立すると解されている。

<他罪の不可罰的事後行為にあたる場合>

 甲が、割引の仲介をする意思がないのに、仲介をする旨の嘘を言って乙から手形の交付をうけ、これを自己の債務の担保に差し入れた場合でも、横領罪は成立しない。

 甲が「乙を騙して手形の交付を受けた」時点で、詐欺罪が[246条1項]が成立する。
 その後の「騙取後に手形を自己の債務の担保に差し入れた行為」いついては、新たに乙の別の法益を侵害するものではなく、その違法性はすでに詐欺罪によって評価されているから、不可罰的事後行為にあたり、新たに横領罪が成立するわけではない。

<業務上横領罪>
[1]刑の加重

 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処せられる。[253条]
 業務上横領罪は、物の占有が業務上の委託関係にもとづいているため、通常の横領罪よりも刑が加重されている。業務上の委託関係にもとづいている場合には、それにもとづかない場合よりも、より多数者との間の委託信任関係が破壊されうるし、また、より頻繁に発生しやすいからだとされる。

[2]主体
 本罪の主体は、「他人の物を業務上占有する者」である。
 「他人の物の占有者」という身分、「業務者」という身分の両方をそなえていなければならない。ニ重の身分犯である。

※2つの身分のうち、1つは「真正身分犯」、もう1つは「不真正身分犯」である。
・「他人の物の占有者」という身分がなければ犯罪が成立しないという意味で、「真正身分犯」である。
・「業務者」という身分があることによって、通常の横領罪[「単純横領罪」という。]よりも刑が加重されるという意味で、「不真正身分犯」である。

[3]業務
 「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて反復又は継続して行われる事務をいう。

≪業務上過失致死傷罪の「業務」と異なる点≫
・本条の「業務」は、業務上過失致死傷罪のそれと異なり、「他人の物を占有する業務」に限られる[例えば、質屋、倉庫業など]。
・業務上過失致死傷罪の「業務」は、「人の生命・身体に対する危険性」を有するものに限られる。これに対し、本罪の「業務」は、それに限られない。

<遺失物等横領罪>
[1]罪質

 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処せられる[245条]。

 横領罪は委託信任関係を破ることを本質とする罪であったが、遺失物等横領罪は委託信任関係を破ることを本質とするものではない。

[2]客体

 「だれも占有していない物[=人の占有を離れた物]」とか、「みずからが委託に基づかずに占有している他人の物」も、その客体に含まれる。
・委託に基づいて占有している他人の物を領得    委託物横領罪
・委託に基づかないで占有している他人の物を領得 遺失物等横領罪
・だれも占有していない他人の物を領得         遺失物等横領罪

 本罪は、他人の占有に属していない他人の物を自分の物のように処分することを内容とするものである。他人の占有を侵害しない点で委託物横領罪と共通し、委託信任関係がない点で異なる。例えば、落し物を勝手に自分の物にした場合には、本罪が成立する。
 「遺失物」とは落とし物であり、「漂流物」とは落とし物が水中にある場合である。
 「その他占有を離れた他人の物」とは、占有者の意思に基づかないで占有を離れ、誰の占有にも属していない物である。例えば、郵便集配人が誤って配達した郵便物がこれにあたる。

[3]行為

 本罪の行為は、遺失物等について、所有者でなければできないような処分を行う行為[横領行為]である。

[4]主観的要件

 主観的な要件としては、「客体が占有を離れた物であること」の表象・認容[=故意]のほか、「不法領得の意思」が必要である。

つづく・・・
タグ:刑法各論
posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 15:11| Comment(0) | 刑法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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