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2012年03月04日

独学院 公文書偽造罪から

参りましょう。

<公文書偽造等罪>
 
 行使の目的で、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、公文書偽造罪として処罰される[155条1項]。
 これらを変造したものも、同様に公文書変造罪として処罰される[同条2項]。

 公文書の偽造・変造が公務所若しくは公務員の印章・署名[偽造した印章・署名も含む。]を使用して行われた場合には、有印公文書偽造罪・変造罪として1年以上10年以下の懲役に処せられ、無印である場合には、無印公文書偽造罪・変造罪として3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられる。

 「公文書」とは、公務所又は公務員が、その名義をもって、権限内において所定の形式に従って作成すべき文書若しくは図画をいう。その権限が法令によると内規又は慣例によるとを問わない。
 公文書は、私文書より証明力が高いので、公文書偽造等罪は私文書偽造等罪より刑が重くなっている。

 公文書偽造等罪の主体に制限は無い。ただし、作成権限を有する公務員が虚偽の文書を作成しても作成名義の冒用ではないので、公文書偽造等罪にはならない。この場合は、虚偽文書作成罪の問題となる。
 公務員であっても、作成権限のない文書を作成すれば、公文書偽造等罪が成立する。

<虚偽公文書作成等罪>

 公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造した時は、印章又は署名の有無により区別して、公文書偽造等罪の例により処罰される[156条]。

 本罪は、公文書の社会的信用性に鑑み、無形偽造を処罰するものである。

 本罪の主体は、文書の作成権限を有する公務員である。職務上、作成権限を有する公務員が、真実に合致しないことを知りながら虚偽の内容の文書等を作成することを内容とする犯罪である。

◆虚偽公文書作成等罪の間接正犯の成立

≪否定説1≫

 虚偽公文書作成等罪[156条]は、公務所の作成権限者たる公務員を主体とうる身分犯である。身分犯は、身分ゆえに科せられた義務の違反が実行行為となるものであるから、義務違反を観念できない非身分行為が実行行為に出ることはできない。したがって、非身分者による間接正犯は成立しない。

≪否定説2≫

 身分を有しない者であっても身分者を利用することにより法益を侵害することが可能であるから、一般的には、非身分犯による間接正犯も認められる。
 しかし、虚偽公文書作成等罪の間接正犯的形態が、公正証書原本等不実記載罪※[157条]として規定されており、しかも、公正証書原本等不実記載罪の方が刑が軽いのであるから、法は、それ以外の間接正犯を処罰しない趣旨であると解される。

※公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿等に関する公正証書の原本に不実の記載させたことを内容とする犯罪

◆虚偽公文書作成等罪の間接正犯の成立

≪判例≫

 公務員としての身分を有しない非身分者[私人]については、虚偽公文書作成等罪の間接正犯は成立しない。
 しかし、作成権限者たる公務員の職務を補佐して公文書の起案を担当する職員が、その地位を利用し、行使の目的をもって職務上起案を担当する文書につき内容虚偽のものを起案し、これを情をしらない上司に提出し、上司をしてその起案文書の内容を真実なものと誤信して署名若しくは記名、捺印せしめ、もって内容虚偽の公文書を作らせた場合には、虚偽公文書作成等罪の間接正犯が成立する。

<公正証書原本不実記載罪>

 公務員に対し虚偽の申立てをして、@登記簿、戸籍謄本その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又はA権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる[157条1項]。

 本罪は、私人の申告に基づいて作成される特に重要な証明力を有する公文書について、記載内容の真正を確保する趣旨で定められた。虚偽公文書作成等罪[156条]の間接正犯的な形態を独立罪としたものである。

<公正証書原本不実記載罪の客体>

 本罪にいう「公正証書」とは、公務員がその職務上作成する文書であって、権利義務に関するある事実を公的に証明する効力を有する文書をいう。
 一般的には、公正証書は公証人が作成する文書を指すが、本罪にいう公正証書はこれよりも範囲が広い。

 本罪の客体は、「権利義務に関する」公正証書の原本である。この「権利義務」とは、財産上の権利義務のほか身分上の権利義務を含む。
 たとえば、登記簿、戸籍謄本のほか、土地台帳や住民票などである。また、「権利義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録」とは、たとえば、自動車登録ファイル、住民台帳ファイルである。

<公正証書原本不実記載罪の行為>

 本罪の行為は、公務員に対し虚偽の申立てをして、@権利義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせること、又はA権利義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせることである。

 「公務員」とは、公正証書の原本[電磁的記録を含む]に対し記載[記録]する権限を有する公務員をいう。作成権限のない公務員が不実の記載をすれば、公文書偽造等罪[155条]が成立する。

 申立てを受ける公務員は、不実の申立てであることを知らない者であることを要する。公務員が不実であることを知ってする場合、当該公務員に実質的審査権があれば、その公務員について、虚偽公文書作成等罪[156条]が成立する。形式的審査権しかない公務員が事情を知って公正証書の原本に不実の記載をする場合には、当該公務員については、罪責に問われない※とされている。

※虚偽が一見して明白な場合は、虚偽公文書作成等罪が成立する。

 「虚偽の申立て」とは、客観的真実に反する申立てをいう。

 「不実の記載」とは、存在しない事実を存在するものとし、存在する事実を存在しないものとして記載することをいう。

<私文書偽造罪>

 行使の目的で、権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、私文書偽造罪として処罰される。
 これらを変造した者も、同様に私文書変造罪として処罰される[159条]。
 私文書の偽造・変造が他人の印章・署名[偽造した印章・署名も含む。]を使用して行われた場合には、有印私文書偽造・変造として3月以上5年以下の懲役に処せられ、無印である場合には、無印私文書偽造・変造として1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられる。

 私文書とは、作成名義人が日本国の公務所・公務員以外のものである文書をいう。そのため、外国の公務所・公務員が作成名義人である文書も私文書である。

 私文書は、公文書よりも公共的信用が低いため、公文書偽造等罪に比べて刑が軽くされている。

<私文書偽造等罪の客体>

 本罪の客体は、他人の「権利義務に関する文書」及び「事実証明に関する文書」である。
 「権利義務に関する文書」とは、権利義務の発生・存続・変更・消滅の法律効果を生じさせることを目的とする意思表示を内容とする文書をいう。公法上のものか私法上のものか問われない。たとえば、契約書、無記名定期預金証書がこれにあたる。
 「事実証明に関する文書」とは、実社会に交渉を有する事項を証明するに足りる文書をいう。
 判例は、いわゆる替え玉受験において、他人名義で作成した答案は志願者の学力の証明に関するものとして、実社会に交渉を有する事項を証明する文書にあたるとした。

<人格の同一性>

 偽造は、作成権限のない者が他人名義を冒用することである。他人名義の冒用については、文書を通じて認識できる人格主体としての名義人と、文書の作成者※が誰であるかを明らかにした上で、両者の間に人格の同一性が一致するか否かによって判断する。人格の同一性が一致しない場合には、他人名義の冒用として有形偽造となる。

※文書の記載をさせた意思の主体[観念説]

 作成者が他人の名義を使用する場合であっても、名義人からあらかじめ承諾を得ていれば、原則として、人格の同一性について偽りは無く、他人名義の冒用ではない。
 もっとも、交通事件原票の供述書のように文書の性質上、名義人自身によって作成されることが予定されており、他人名義で作成することが法令上許されないものについては、たとえ名義人の承諾があっても名義の冒用であるとされた。

 また、通称名を使用して文書を作成しても、原則として他人名義の冒用にはあたらないが、文書の性質上、自己以外の名前を書くことが別の者を表示することになる場合には、人格の同一性が偽られたことになり、名義の冒用があるとされる
 判例は、同姓同名の弁護士が実在することを利用して、弁護士の肩書を使用して「弁護士報酬請求書」を作成した事案で、その文書が弁護士資格を有する者が作成した形式・内容のものである以上、文書に表示された名義人は実在する同姓同名の弁護士であって、弁護士資格をもたない被告人とは別人格の者であるから、名義人と作成者の人格の同一性にそごを生じ、名義の冒用があるとした。

<私文書偽造罪に関する判例[要旨]>
◆≪最決S56.4.8≫
 他人名義で交通反則切符中の供述書を作成した場合、この供述書作成について、あらかじめその他人から承諾を得ていても、私文書偽造罪が成立する。

◆≪最判S26.5.11≫
 他人名義の預金通帳に基づいて、その他人名義の預金払戻証書を作成した場合は、その他人がすでに死亡していたとしても、私文書偽造罪が成立する。

◆≪最決S42.11.28≫
 共同して会社を代表する定めがある会社の代表取締役の一人が、行使の目的で、他の代表取締役の署名や印鑑を冒用して、共同代表の形で当該会社名義の文章を作成した場合は、私文書偽造罪が成立する。

<虚偽診断書等作成罪>

 医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、3年以下禁錮又は30万円以下の罰金に処せられる[160条]。

 本罪は、私文書の無形偽造を処罰するものである。
 医師が公務所に提出すべき診断書等は、私文書であっても法律関係の証明書類として特に重要性が高いため、無形偽造を処罰対象とした。私文書の無形偽造を処罰するのは、本罪の場合のみである。

 主体は「医師」である。歯科医師を含む。

 客体は、医師が「公務所に提出すべき」診断書、検案書※、死亡証書[死亡診断書]に限られる。医師自らが提出する場合のほか、他の者によって提出される場合も含む。

※医師が死体について死因、死期、死所などの事実を医学的に確認した結果を記載した文書

つづく・・・
ラベル:刑法各論
posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 22:03| Comment(0) | 刑法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月03日

独学院 文書偽造罪の罪から

おはっす、参りましょう。

<文書偽造の罪>

 文書偽造罪は、文書に対する公共的信用を保護法益とする。
 公正証書、契約書、卒業証明書といった各種の文書は、社会生活上重要な機能を果たしているが、これらが偽造されたものであれば円滑な社会生活は望めない。そこで、文書に対する公共的信用を保護し、社会生活の安定を図るため、文書偽造罪が定められた。

 もっとも、具体的な保護の内容については議論がある。
 すなわち、文書が真正な作成名義人によって作成されたものであるという形式的事実を保護する考え[形式主義]と、文書の内容が真正なものであるという実質的真実を保護する考え[実質主義]の対立がある。
 たとえば領収書について、形式主義によれば、債権者[領収書の名義人]が作成すれば、真正な作成名義人により作成されたのだから、金額が虚偽であっても偽造ではないが、債務者が勝手に作成すれば金額が真実と合致していても偽造とされる。
 これに対し、実質主義によれば、作成名義人である債権者が作成しても金額が虚偽であれば偽造となるが、債務者が作成しても金額が真実と合致していれば偽造ではないとされる。

 判例、通説は、形式主義の立場を基本とし、特に重要な場合に限って実質主義を採用する。

<文書>

 本罪の客体である[文書]とは、@文字その他の可読的符合を用い、Aある程度持続すべき状態において、B特定人の意思又は観念を物体上に表示したもので、Cその表示の内容が、法律上又は社会生活上重要な事項に関する証拠となりうるものをいう。

 たとえば、砂浜に書かれた文字はすぐに消えるので文書ではないが、黒板に白墨で書かれたものは、文書とされる。
 また、刑法が保護すべき文書は社会生活上証拠となりうるものであることを要するから、小説、書画といった芸術作品は文書にはあたらないとされる。
 また、「文書」は、確定的な人の観念・意思を表示するものとして他に代替を許さない唯一のもの、つまり原本であることを要する。
 写しは、基本的にその作成者の意思・観念が入り込む余地があるため、公共的信用は希薄であり文書として保護に値しないからである。

◆写真コピーは「文書」にあたるか。

≪肯定説≫[最判]
・たとえ原本の写しであっても、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものは文書に含まれると解すべきである。
・写真コピーは、写しであるが、機械的に正確な複写版であって、原本と全く同じく正確に再現され、一般にそのようなものとして信頼される性質のものであり、また、それゆえに実生活上原本に代わるべき証明文書として一般に通用し、原本と同程度の社会的権能を信用性を有する場合が多い。

≪否定説≫
・写しは、原本を正確に写し出しても写しであることに変わりは無く、写真コピーの作成者の意思・観念が入り込む余地のあるものである。

 写真コピーについては、文書性のほか、「偽造」にあたるかどうかについても議論がある。偽造[狭義]とは、文書の作成権限を有しない者が他人の名義を冒用して文書を作成することをいう。
 写真コピーについて「偽造」を肯定する見解は、写真コピーの作成名義人は、原本作成名義人であるとし、写真コピーの作成者による原本作成名義人の名義の冒用があるとする。
 これに対し「偽造」を否定する見解は、写真コピーの作成名義人は、写真コピーの作成者であるから、名義の冒用にはならないとする。
 判例は、公文書の写真コピーについて、原本作成名義人が作成名義人であるとした上で、原本の有印公文書を写真コピーした場合は、その写真コピーの上に印章、署名が複写されていることから、有印公文書の偽造にあたるとした。

≪作成名義人≫

 文書から理解されるその意識内容の主体を名義人という。
 文書偽造罪の罪の対象となる文書については、名義人が存在していることが必要である。
 誰が、作成したかわからないような文書では、誰も信用しないであろうから、作成名義人が不明の文書は保護に値しないからである。

 この関係で、死者や架空人を作成名義人とする文書について偽造罪が成立するかという問題がある。これに関し、判例・通説は、死者や架空人を名義人とする文書でも、文書偽造罪は成立すると解している。一見実在しそうな人物が名義人とされた場合には、当該文書に対して公共的信用が生じるので、これを保護する必要があるとの理由による。

<有形偽造と無形偽造>

 偽造とは、虚偽の文書を作成することであるが、これには「有形偽造」と「無形偽造」とがある。
 有形偽造とは、作成権限のない者が他人名義の文書を作成することをいい、無形偽造とは、作成権限のある者が内容虚偽の文書を作成することをいう。

 形式主義を基本とする立場からは、有形偽造が本来の偽造であるとされる。

<狭義の「偽造」>

 「有形偽造」は、@作成権限のない者が他人名義を冒要して文書を作成する「狭義の偽造」と、A真正に成立している文書に変更を加える権限のない者がその非本質部分に変更を加える「有形変造」とに区別される。

 一般に「偽造」といわれるのは、有形偽造のうち変造を除いて狭義の偽造である。
 近時は、狭義の偽造について、文書の作成者と名義人との人格同一性を偽ることであると定義されることもある。
 「人格の同一性」とは、文書を通して認識できる人格主体の同一性をさし、文書から認識できる意識内容の主体としての文書の作成「名義人」と、文書の「作成者」とが一致するかどうかという視点で有形偽造の有無を判断する。実質的には、前述の有形偽造の内容と同じであるとされる。

 偽造と変造とは、変更を加えるのが本質的部分か非本質的部分かで区別される。真正に成立した他人名義の文書の本質的部分に変更を加え、もとの文書と同一性を失うに至った場合は、変造ではなく偽造となる。

 「無形偽造」についても、@作成権限のある者が新たに内容虚偽の文書を作成する「狭義の無形偽造」と、A真正に成立している文書に権限ある者が内容虚偽の変更を加える「無形変造」とに区別される。
 無形偽造[無形変造を含む。]が処罰されるのは、一定の場合に限定されている。

◆代理・代表名義の冒用
 無権代理人乙が、「甲代理人乙」という名義で文書を作成した場合の文書の名義人は誰か。

≪有形偽造説≫[最判]
 代理人であると誤信させるに足りるような資格を表示して作成された文書名義人は、本人「甲」である。
[理由]
 文書に対する公共的信用は、文書の効果帰属主体である本人が実際に文書の内容どおりの意思・観念を有しているという点に向けられるが、代理形式の文書によって表示された意識内容に基づく効果は、代理された本人に帰属するものである。→無権代理による代理形式の文書の作成は、作成者[乙]による名義人[甲]の名義人を冒用して有形偽造にあたる。

≪無形偽造説≫
 文書の名義人は、無権代理人[乙]である。
[理由]
 「甲代理人乙」という名義で文書を作成した場合、「甲代理人」という部分は単なる肩書にすぎず、文書の内容の一部を偽るものにすぎない。
→無権代理による代理形式の文書の作成は、代理人としての資格を偽るものであり、文書の内容の真実を偽るものとして無形偽造にあたる。

 私文書偽造罪は、有形偽造を原則とするため、無形偽造と解する立場では、代理・代表名義の冒用を不可罰とするはずであるが、無形偽造説は、無印私文書偽造罪[159条3項]は、例外的に無形偽造も含む趣旨であるとする。

 なお、代理権限を有する者が、代理権限を濫用して本人名義の文書を作成した場合、権限内の行為である以上、名義の冒用は無く、偽造には当たらない。この場合には、背任罪の成否が問題になる。

<有印偽造・無印偽造>

 有印偽造は、印章又は署名を用いた偽造であり、無印偽造は、そうでない場合である。

 「印章」とは、いわゆる印影[はんこ]である。
 「署名」とは、記名[印刷や代筆による氏名の記載]であると自署[サイン]であるとを問わない、とするのが判例である。
 これに対し、署名は、自署に限るとする見解もあるが、判例の見解によれば、結局、有印か無印かは、文書上に作成名義人の名称が記載されているかどうかで判断されることになる。印影[はんこ]の有無ではない。

 偽造された文書に、印章又は署名のいずれか一方が用いられていれば、有印偽造となる。印章又は署名自体が、真正なものか偽造されたものかであるかは問題にならない。

 有印偽造は無印偽造に比べて文書に関する公共的信用を害する程度が高いので、重く罰せられている。

<行使の目的>

 文書偽造罪が成立するには、原則として、行使の目的で偽造が行われることを要する[154条〜156条・159条]。

 「行使」とは、偽造文書[虚偽文書を含む。]を真正に成立したものとして他人に交付、提示等して、その閲覧に供し、その内容を認識させまたは認識しうる状態におくことをいう。文書偽造罪の保護法益は、文書の真正に対する公共的信用であるが、偽造文書が行使されることにより公衆が真正な文書として誤信するおそれがない限り、公共的信用を害することがないからである。

 文書の本来の用法に従って使用する目的でなくても、何人かによって真正・真実な文書として誤信される危険があることを認識していれば、行使の目的があるとされる。

つづく・・・
ラベル:刑法各論
posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 10:54| Comment(0) | 刑法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月02日

独学院 有価証券偽造罪から

参りましょう。

<有価証券偽造罪>

 行使の目的で、公債証書、官庁の証券、会社の株券その他の有価証券を偽造し、又は変造した者は、3月以上10年以下の懲役に処せられる[162条1項]。

 有価証券偽造罪の罪は、有価証券に対する公共の信用を保護するものである。

<有価証券偽造罪の構成要件>

 本罪の客体である「有価証券」とは、財産上の権利が証券に表示されており、その表示された権利の行使又は処分につき証券の所持を必要とするものをいう。

 手形・小切手、化物引換証等、商法上の有価証券のほか、鉄道乗車券、定期券、宝くじ、商品券等がこれにあたる。
 これに対し、郵便預金通帳、無記名預金証書は、有価証券ではないとされている。権利の行使に必ずしも証券の所持を必要とせず[他の方法で証明できれば権利を行使できる]、証券に権利が化体するものではないからである。これらは、その性質により公文書偽造罪又は私文書偽造罪の客体となる。

 本罪の行為は、行使の目的で、偽造又は変造することである。

 「行使の目的」とは、真正な有価証券として使用する目的をいう。他人に対して流通させる目的は必要ない。

 「偽造」とは、作成権限のない者が、他人の名義を冒用して有価証券を作成することである。架空名義の有価証券を作出する場合でも、行使の目的をもって外形上一般人が真正な有価証券であると誤信する程度に作成されていれば、有価証券に対する公共の信用を害するので、偽造にあたるとされる。

 「変造」とは、作成権限のない者が、真正に成立している他人名義の有価証券の非本質的部分に変更を加えることをいう。

<有価証券偽造罪に関する判例[要旨]>

◆≪大判T12.2.15>
 期間経過により無効となった鉄道乗車券の、なお有効であるかのように装うための終期に改竄は、有価証券の「偽造」にあたる。

◆≪最判S39.12.25≫
 廃業後に死亡した者の名義での約束手形の振り出しは、相続人の承諾を得ていても、有価証券偽造罪が成立する。

◆≪大判T3.5.7≫
 手形の振出日付や受付日付の改竄は、有価証券の「変造」にあたる。

◆≪最判S36.9.26≫
 小切手の金額欄の数字の改竄は、有価証券の「変造」にあたる。

◆テレホンカードの有価証券性

 テレホンカードの中核は、磁気部分であり、可視性・可読性をもたない電磁的記録にすぎないから、有価証券にあたらないのではないか。

≪肯定≫判例

 テレホンカードについては、磁気情報部分並び券面上の記載[作成名義人、通話可能度数]及び外観を一体としてみれば、電話の役務の提供を受ける財産上の権利がその証券上に表示されていると認められ、かつ、これをカード式公衆電話に挿入することにより使用するものであるから、テレホンカードは有価証券に当たると解するのが相当である。→磁気情報部分に記録された通話可能度数を権限なく改ざんすれば、有価証券変造罪[162条1項]が成立する。
 なお、テレホンカード等のプリペイドカードの偽造・変造は、平成13年改正で新設された支払用カード電磁的記録不正作出等罪[163条の2]の対象となったことで、上記の判例の意義はほとんど失われたといえる。

<有価証券虚偽記入罪>

 行使の目的で、有価証券に虚偽の記入をした者も、有価証券偽造罪と同様に処せられる[162条2項]。

 「虚偽の記入」とは、既成の有価証券に対すると否とを問わず、有価証券に真実に反する記載をするすべての行為をいう。
 判例は、自己名義によるものか他人名義によるものか、つまり作成権限の有無を問わないとする。
 ただし、有価証券の基本的な振出し行為に関するものについては、虚偽記入ではなく有価証券偽造にあたるとする。

◆≪大判T14.9.25≫
 設立が無効の会社の登記上の取締役が作成した株券は、会社の設立登記がある以上、刑法上の有価証券に該当し、株主名簿・資本金額・一株の金額・その払込なることを記入した時は、有価証券虚偽記入罪が成立する。

<偽造有価証券行使罪>

 偽造若しくは変造の有価証券又は虚偽の記入がある有価証券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者は、3月以上10年以下の懲役に処せられる[163条1項]。

 「行使」とは、偽造有価証券を真正なものとして、また、虚偽記入の有価証券を真実を記載したもののように装って使用することをいう。
 本罪の行使は、偽造通貨行使罪のように流通に置くことを必要としない。したがって、単に資力を仮装する目的で呈示する場合も、行使に当たる。

 解釈上、単に保管を依頼しただけの場合には、それが偽造有価証券であっても、いまだ公共の信用を害するまでには至っていないとの理由から、「行使」に該当しないとされている。

 「行使」と「交付」は、同一の刑罰であるが条文上、区別されている。相手方が偽造有価証券であることの事情を知らない場合が行使、相手方がそれを知っている場合は交付となる。

つづく・・・
ラベル:刑法各論
posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 10:36| Comment(0) | 刑法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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