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2012年03月10日

独学院 賄賂[わいろ]の罪から

今日で刑法は終わりです。参りましょう。

<賄賂[わいろ]の罪>

 賄賂罪は、公務員がその職務に関して不正の報酬[賄賂]を受け取る等することを内容とする犯罪である。
 賄賂罪の保護法益は、職務の公正及びそれに対する社会の信頼である。

 賄賂の罪の主体は、公務員である。

 「賄賂」とは、公務員の職務に関する不正の報酬としての一切の利益をいう。
 公務員に提供される不正の報酬としての利益の典型例は金銭であるが、その他の財産的利益はもちろん、およそ人の欲望を満足させる利益であれば、すべて賄賂となりうる。
 もっとも、社会慣習上是認される範囲での礼意的贈与は、賄賂にはあたらない。

<職務関連性>

 賄賂としての報酬は、「汚職に関し」てのものでなければならない。これを職務関連性という。
 「職務」とは、法令上、当該公務員等の一般的・抽象的な職務権限に属するものであればよく、具体的に事務分配を受けて担当している職務でなくても良い。一般的・抽象的な職務権限に属する行為の対価として金品の収受等があれば、職務の公正に対する社会一般の信頼が害されるからである。
 たとえば、ロッキード事件では、総理大臣が運輸大臣[現在の国土交通大臣]に特定の民間航空機の購入を勧奨するよう働きかけたことに対する金品の収受について、職務関連性が肯定された。総理大臣は、一般的な職務権限として内閣の明示の意思に反しない限り行政各部に対して、その所管事務について一定の方向で処理するよう指示を与える権限があり、先の総理大臣の運輸大臣に対する働きかけは一般的な職務権限内の行為といえるとしたものである。

 さらに「職務に関し」とは、一般的職務権限に属する行為に対する場合だけでなく、「職務に密接に関連する行為」に対する場合も含まれるとされる。
 「職務に密接に関連する行為」とは、本来の職務行為として法令上の効力は認められないとしても、職務行為と関連性があり社会通念上職務行為として認められ行われるものをいう。
 判例は、市議会議員が市議会議長選挙に関し、同じ会派に属する議員の投票を拘束する趣旨で投票すべき候補者を選出する行為は、市議会議員の職務に密接な関係のある行為とした。

<単純収賄罪>

 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求をし、若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処せられる[197条1項前段]。

 本罪の主体は、公務員である[真正身分犯]。

 本罪の行為は、賄賂の「収受」、「要求」、「約束」のいずれかである。
 「収受」とは、賄賂を取得することである[賄賂収受罪]。
 「要求」とは賄賂の供与を要求することである[賄賂要求罪]。要求行為があれば相手方がこれに応じなくても既遂になる。
 「約束」とは、賄賂を贈る相手方[賄賂者]との間で将来賄賂を収受することについて合意することをいう。現実に賄賂が授受されなくても、約束したことで既遂になる。

 主観的には、賄賂の収受、要求、又は約束にあたり、その目的とされた利益が職務行為の不正な対価[賄賂]にあたることの認識が必要である。このような認識がなければ故意はみとめられない。

<受託収賄罪>

 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求をし、若しくは約束をした場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処せられる[197条1項後段]。
 本罪は、収賄が請託を受けてなされることから、単純収賄罪よりも重く処罰するものである。

 「請託」とは、職務に関し、一定の職務行為を依頼することである。請託があった場合、具体的な職務との対価関係が明白となり、職務の公正に対する社会の信頼が強く害されるので、重く処罰されるのである。

 請託は、正当な職務行為に対するものであっても良い。
 また、将来の職務行為に対するものでもよい。判例は、市長が任期満了前に、市長の一般的職務権限に属する事項で、かつ、再選された場合に具体的に担当することになる職務について請託を受けて賄賂を収受したときは、受託収賄罪が成立するとした。

<事前収賄罪>

 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、5年以下の懲役に処せられる[197条2項]。

 本罪の主体は、「公務員になろうとする者」である。

 「その担当すべき職務」とは、将来、相当程度の蓋然性をもって担当する可能性があるという場合である。
 請託を受けてなされることを要する。

 行為者は、公務員となった場合に、罰せられる。 
 市長候補者が、市長の職務に関して請託を受けて賄賂を受け取っても、市長に当選できなかった場合には処罰されない。

<第三者供賄罪>

 公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束したときは、5年以下の懲役に処せられる[197条の2]。

 本罪は、公務員が賄賂者から第三者に対して賄賂を提供させることを内容とする犯罪である。

 「供与」とは、第三者に賄賂を受け取らせることをいう。
 供与の「約束」や「要求」があれば、実際に第三者が賄賂を受け取らない場合でも、本罪が成立する。
 公務員等の職務に関し、請託を受けてなされることを要する。

<加重収賄罪>

 公務員が単純収賄罪、受託収賄罪、事前収賄罪、又は第三者供賄罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、1年以上の有期懲役に処せられる[197条の3第1項]。

 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときでも、上記と同様に処せられる[同条2項]。

 本罪は、収賄行為とともにそれに関連して職務違反の行為が行われたことを理由に、特に重く処罰するものである。

<加重収賄罪の構成要件>

 本罪の主体は、公務員であるが、事前収賄罪による不正な行為等も処罰の対象となるので、公務員となろうとする者が公務員となった場合も含まれる。

 本罪の行為は、次のとおりである。
@単純収賄罪、受託収賄罪、事前収賄罪、又は第三者供賄罪を犯し、
よって
A不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったこと
又は、
@その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、
A賄賂の収受・要求・約束or第三者へ賄賂を供与させor供与の要求・約束をしたこと

<事後収賄罪>

 公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処せられる[197条の3第3項]。

 本罪は、公務員等が退職後に、在職中の職務違反行為に関連して収賄することを内容とする犯罪である。

 本罪は、@在職中の請託、A職務上の不正行為、B退職後の賄賂の収受・要求・約束により構成される。

 本罪に関連して、公務員等が一般的職務権限を異にする他の職務に転じた後で、転職前の職務に関して賄賂を収受した場合に、単純収賄罪が成立するのかという問題がある。
 すなわち、一般的職務権限を異にする職務に関して賄賂を収受している以上、職務との関係では「公務員であった者」として事後収賄罪として扱われ、その結果請託や職務上の不正行為がないと処罰されないのではないかという問題である。
 判例は、事後収賄罪にいう「公務員であった者」には現在公務員である者は含まれないとして、事後収賄罪の問題にはせず、単純収賄罪の成否の問題であるとした。そして、公務員が一般的職務権限を異にする他の職務に転じた後に、前の職務に関して賄賂を収受した場合であっても、供与の当時、供与を受けた者が公務員である以上、単純収賄罪が成立するとした。

<あっせん収賄罪>

 公務員が請託を受けて、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんすること、又は、したことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処せられる[197条の4]。

 本罪は、たとえば、国会議員が地元の業者等から依頼を受け、その地位を利用して、官僚に不正な行為をさせることについて仲介して便宜を図り、謝礼を受け取るような場合を予定している。
 この場合の賄賂は、自己の職務の対価としてではなく、仲介の便宜を図った対価として収受等するものである。

 本罪の主体は、公務員である。

 「請託を受け」とは、他の公務員の職務行為についてあっせんすることの依頼を受けて、これを承諾することである。
 「あっせん」とは、他の公務員に職務上の違反行為をさせることについて、請託者又は賄賂者と他の公務員との間にたって、仲介し便宜を図ることをいう。
 あっせんは、過去のあっせんでも、将来行われるあっせんでもよく、それに対して賄賂が収受、要求、約束されればよい。

<贈賄罪>

 各収賄罪[197条〜197条の4]に規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処せられる[198条]。

 賄賂の罪においては、賄賂を提供される側のみならず提供する側も、公務の執行の公正を害するものとして、処罰対象とされる。
 「供与」とは、賄賂を相手方に収受させる行為をいう。相手方が収受することを要し、収受しない場合には、「申込み」とされる。
 「申込み」は、賄賂の供与の申出である。相手方が賄賂であることを認識する必要は無いが、認識できる状態で行われる必要がある。
 「約束」とは、将来、賄賂の供与について公務員等と合意することである。

 贈賄罪の供与と収受、約束とは必要的共犯関係にあり、相手方に賄賂収受罪、賄賂約束罪が成立する。

<没収・追徴>

 犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収される。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴させる「197条の5」。

 賄賂罪における賄賂は、犯罪行為を組成した物[犯罪組成物件]である。刑法上、犯罪組成物件に対する没収・追徴は、任意的なものであるが「19条・19条の2」、賄賂罪において、「収受した賄賂」は、必要的に没収又は追徴される。収賄者側に不法の利益を保持させない趣旨である。

刑法終わり、お疲れ様。つづく・・・

タグ:刑法各論
posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 11:08| Comment(1) | 刑法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
刑法お疲れ様です♪
Posted by ハーバードナンパスクール佐藤エイチ at 2012年03月19日 18:36
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