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2012年03月03日

独学院 文書偽造罪の罪から

おはっす、参りましょう。

<文書偽造の罪>

 文書偽造罪は、文書に対する公共的信用を保護法益とする。
 公正証書、契約書、卒業証明書といった各種の文書は、社会生活上重要な機能を果たしているが、これらが偽造されたものであれば円滑な社会生活は望めない。そこで、文書に対する公共的信用を保護し、社会生活の安定を図るため、文書偽造罪が定められた。

 もっとも、具体的な保護の内容については議論がある。
 すなわち、文書が真正な作成名義人によって作成されたものであるという形式的事実を保護する考え[形式主義]と、文書の内容が真正なものであるという実質的真実を保護する考え[実質主義]の対立がある。
 たとえば領収書について、形式主義によれば、債権者[領収書の名義人]が作成すれば、真正な作成名義人により作成されたのだから、金額が虚偽であっても偽造ではないが、債務者が勝手に作成すれば金額が真実と合致していても偽造とされる。
 これに対し、実質主義によれば、作成名義人である債権者が作成しても金額が虚偽であれば偽造となるが、債務者が作成しても金額が真実と合致していれば偽造ではないとされる。

 判例、通説は、形式主義の立場を基本とし、特に重要な場合に限って実質主義を採用する。

<文書>

 本罪の客体である[文書]とは、@文字その他の可読的符合を用い、Aある程度持続すべき状態において、B特定人の意思又は観念を物体上に表示したもので、Cその表示の内容が、法律上又は社会生活上重要な事項に関する証拠となりうるものをいう。

 たとえば、砂浜に書かれた文字はすぐに消えるので文書ではないが、黒板に白墨で書かれたものは、文書とされる。
 また、刑法が保護すべき文書は社会生活上証拠となりうるものであることを要するから、小説、書画といった芸術作品は文書にはあたらないとされる。
 また、「文書」は、確定的な人の観念・意思を表示するものとして他に代替を許さない唯一のもの、つまり原本であることを要する。
 写しは、基本的にその作成者の意思・観念が入り込む余地があるため、公共的信用は希薄であり文書として保護に値しないからである。

◆写真コピーは「文書」にあたるか。

≪肯定説≫[最判]
・たとえ原本の写しであっても、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものは文書に含まれると解すべきである。
・写真コピーは、写しであるが、機械的に正確な複写版であって、原本と全く同じく正確に再現され、一般にそのようなものとして信頼される性質のものであり、また、それゆえに実生活上原本に代わるべき証明文書として一般に通用し、原本と同程度の社会的権能を信用性を有する場合が多い。

≪否定説≫
・写しは、原本を正確に写し出しても写しであることに変わりは無く、写真コピーの作成者の意思・観念が入り込む余地のあるものである。

 写真コピーについては、文書性のほか、「偽造」にあたるかどうかについても議論がある。偽造[狭義]とは、文書の作成権限を有しない者が他人の名義を冒用して文書を作成することをいう。
 写真コピーについて「偽造」を肯定する見解は、写真コピーの作成名義人は、原本作成名義人であるとし、写真コピーの作成者による原本作成名義人の名義の冒用があるとする。
 これに対し「偽造」を否定する見解は、写真コピーの作成名義人は、写真コピーの作成者であるから、名義の冒用にはならないとする。
 判例は、公文書の写真コピーについて、原本作成名義人が作成名義人であるとした上で、原本の有印公文書を写真コピーした場合は、その写真コピーの上に印章、署名が複写されていることから、有印公文書の偽造にあたるとした。

≪作成名義人≫

 文書から理解されるその意識内容の主体を名義人という。
 文書偽造罪の罪の対象となる文書については、名義人が存在していることが必要である。
 誰が、作成したかわからないような文書では、誰も信用しないであろうから、作成名義人が不明の文書は保護に値しないからである。

 この関係で、死者や架空人を作成名義人とする文書について偽造罪が成立するかという問題がある。これに関し、判例・通説は、死者や架空人を名義人とする文書でも、文書偽造罪は成立すると解している。一見実在しそうな人物が名義人とされた場合には、当該文書に対して公共的信用が生じるので、これを保護する必要があるとの理由による。

<有形偽造と無形偽造>

 偽造とは、虚偽の文書を作成することであるが、これには「有形偽造」と「無形偽造」とがある。
 有形偽造とは、作成権限のない者が他人名義の文書を作成することをいい、無形偽造とは、作成権限のある者が内容虚偽の文書を作成することをいう。

 形式主義を基本とする立場からは、有形偽造が本来の偽造であるとされる。

<狭義の「偽造」>

 「有形偽造」は、@作成権限のない者が他人名義を冒要して文書を作成する「狭義の偽造」と、A真正に成立している文書に変更を加える権限のない者がその非本質部分に変更を加える「有形変造」とに区別される。

 一般に「偽造」といわれるのは、有形偽造のうち変造を除いて狭義の偽造である。
 近時は、狭義の偽造について、文書の作成者と名義人との人格同一性を偽ることであると定義されることもある。
 「人格の同一性」とは、文書を通して認識できる人格主体の同一性をさし、文書から認識できる意識内容の主体としての文書の作成「名義人」と、文書の「作成者」とが一致するかどうかという視点で有形偽造の有無を判断する。実質的には、前述の有形偽造の内容と同じであるとされる。

 偽造と変造とは、変更を加えるのが本質的部分か非本質的部分かで区別される。真正に成立した他人名義の文書の本質的部分に変更を加え、もとの文書と同一性を失うに至った場合は、変造ではなく偽造となる。

 「無形偽造」についても、@作成権限のある者が新たに内容虚偽の文書を作成する「狭義の無形偽造」と、A真正に成立している文書に権限ある者が内容虚偽の変更を加える「無形変造」とに区別される。
 無形偽造[無形変造を含む。]が処罰されるのは、一定の場合に限定されている。

◆代理・代表名義の冒用
 無権代理人乙が、「甲代理人乙」という名義で文書を作成した場合の文書の名義人は誰か。

≪有形偽造説≫[最判]
 代理人であると誤信させるに足りるような資格を表示して作成された文書名義人は、本人「甲」である。
[理由]
 文書に対する公共的信用は、文書の効果帰属主体である本人が実際に文書の内容どおりの意思・観念を有しているという点に向けられるが、代理形式の文書によって表示された意識内容に基づく効果は、代理された本人に帰属するものである。→無権代理による代理形式の文書の作成は、作成者[乙]による名義人[甲]の名義人を冒用して有形偽造にあたる。

≪無形偽造説≫
 文書の名義人は、無権代理人[乙]である。
[理由]
 「甲代理人乙」という名義で文書を作成した場合、「甲代理人」という部分は単なる肩書にすぎず、文書の内容の一部を偽るものにすぎない。
→無権代理による代理形式の文書の作成は、代理人としての資格を偽るものであり、文書の内容の真実を偽るものとして無形偽造にあたる。

 私文書偽造罪は、有形偽造を原則とするため、無形偽造と解する立場では、代理・代表名義の冒用を不可罰とするはずであるが、無形偽造説は、無印私文書偽造罪[159条3項]は、例外的に無形偽造も含む趣旨であるとする。

 なお、代理権限を有する者が、代理権限を濫用して本人名義の文書を作成した場合、権限内の行為である以上、名義の冒用は無く、偽造には当たらない。この場合には、背任罪の成否が問題になる。

<有印偽造・無印偽造>

 有印偽造は、印章又は署名を用いた偽造であり、無印偽造は、そうでない場合である。

 「印章」とは、いわゆる印影[はんこ]である。
 「署名」とは、記名[印刷や代筆による氏名の記載]であると自署[サイン]であるとを問わない、とするのが判例である。
 これに対し、署名は、自署に限るとする見解もあるが、判例の見解によれば、結局、有印か無印かは、文書上に作成名義人の名称が記載されているかどうかで判断されることになる。印影[はんこ]の有無ではない。

 偽造された文書に、印章又は署名のいずれか一方が用いられていれば、有印偽造となる。印章又は署名自体が、真正なものか偽造されたものかであるかは問題にならない。

 有印偽造は無印偽造に比べて文書に関する公共的信用を害する程度が高いので、重く罰せられている。

<行使の目的>

 文書偽造罪が成立するには、原則として、行使の目的で偽造が行われることを要する[154条〜156条・159条]。

 「行使」とは、偽造文書[虚偽文書を含む。]を真正に成立したものとして他人に交付、提示等して、その閲覧に供し、その内容を認識させまたは認識しうる状態におくことをいう。文書偽造罪の保護法益は、文書の真正に対する公共的信用であるが、偽造文書が行使されることにより公衆が真正な文書として誤信するおそれがない限り、公共的信用を害することがないからである。

 文書の本来の用法に従って使用する目的でなくても、何人かによって真正・真実な文書として誤信される危険があることを認識していれば、行使の目的があるとされる。

つづく・・・
タグ:刑法各論
posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 10:54| Comment(0) | 刑法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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