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2012年02月29日

独学院 放火罪の保護法益から

参りましょう。

<放火罪の保護法益>

 放火罪は、放火によって住居、建造物等を焼損し、公衆の生命・身体・財産に対して危険を生じさせる犯罪である。
 保護法益は複合的なものであり、具体的には次のように解されている。

 まず、本罪は公共危険罪である。したがって、不特定又は多数人の生命・身体・財産の安全が第1次的な保護法益である。

 また、本罪は、放火の目的物である住居・建物等について、人が現に住居に使用[現在]し、又は現に人がいる[現在]かどうかによって法定刑を異にしている。これは、本罪が2次的には人の生命・身体の安全を保護法益としているからであると説明される。

 すなわち、人が現住する建造物に対する放火[現住建造物等放火罪]の刑は、死刑、無期懲役又は5年以上の懲役であり、殺人罪[死刑、無期懲役又は5年以上の懲役]と刑が等しいのに比し、人が現住していない建造物に対する放火[非現住建造物等放火罪]については、死刑も無期懲役もなく下限も懲役2年である。これほどの刑の軽重が設けられたのは、本罪が人の生命・身体に対する罪としての性格を有するからに他ならない。

 さらに、本罪は、財産犯的性格、特に毀棄罪[損壊罪]の性格をも持ち合わせている。目的物が自己所有であるか他人所有であるかによって法定刑に大きな差異を設けているからである。そのため本罪は、人の財産をも保護法益とするものであるといえる。

<放火罪の種類>

 放火罪には、主に次のような種類があり、それぞれ放火の目的物が何であるかによって区別される。

@ 現住建造物等放火罪[108条]・・・現に人が住居に使用し、又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱抗[こうこう]
A 非現住建造物等放火罪[109条]・・・現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱抗
B 建造物等以外放火罪[110条]・・・@A以外の物[例えば、自動車、人の現在しない電車]

 非現住建造物等放火罪及び建造物等以外放火罪については、その目的物が、他人の所有するものであるか[他人所有]、自己の所有する物であるか[自己所有]によって法定刑に差が設けられている。
 また、非現住建造物等放火罪が自己所有の物に係る場合、及び建造物等以外放火罪[他人所有・自己所有]については、放火によって目的物が焼損するだけでなく、公共の危険を生じさせることが必要である。

<抽象的危険犯と具体的危険犯>

 現住建造物等放火罪及び非現住建造物等放火罪[他人所有]については、放火により目的物が焼損すればよく、具体的な公共の危険の発生は不要である[抽象的危険犯]。所定の目的物に対する放火により、公共の危険が発生したものと擬制されるのである。

 これに対し、非現住建造物等放火罪[[自己所有]及び建造物以外放火罪については、放火による焼損だけでなく、具体的に公共の危険の発生が必要である[具体的危険犯]。
 判例は、110条に関して、「公共の危険」とは、一般不特定の多数人をして、他の建造物等に延焼する結果を発生するおそれがあると思わせるのに相当な状態をいう。

<現住者等の承諾の効果>

 放火罪は、公共危険罪であるとともに、建造物等に現在する人の生命・身体に対する罪としての側面や財産犯的側面も有することから、現住者等が承諾し、又は現住者等が行為者になることによって、成立する犯罪が異なる場合がある。

 建造物等の現住者が放火を承諾すると、現住建造物等放火罪[108条]ではなく、非現住建造物放火罪[109条]となる。これは、放火罪が人の生命・身体に対する罪としての側面を有するため、現住者の承諾があれば、人の現住しない建造物等と同視されることになるからである。

 なお、放火犯人が1人で住居している場合には、現住者の承諾があったのと同じであるから、非現住建造物等放火罪として処断される。
 また、建造物等の所有者が放火を承諾すると、他人所有物の放火ではなく、自己所有物の放火として扱われる。これは、放火罪が財産犯的性格を有するからである。
 なお、現住建造物等放火罪[108条]については、その犯罪性が重大であることから、その建造物等に現住していない所有者が承諾していても、何ら犯罪の成否に影響を及ぼさない。

<放火・焼損の意味>

 「放火」とは、目的物の焼損を生ぜしめることをいい、それによって目的物が「焼損」に至れば既遂となる。

◆「焼損」の意義
≪独立燃焼説≫[最判]
 火が媒介物[火を付けた新聞紙等]を離れて目的物に燃え移り、独立に燃焼する状態に達したこと。

≪燃え上がり説≫
 目的物が「燃え上がったこと」、つまり、目的物の重要な部分が燃焼を開始したこと

≪効用喪失説≫
 火力により目的物の重要な部分を失い、その本来の効用を喪失したこと

≪毀棄説≫
 火力により目的物が毀棄罪にいう損壊の程度に達したこと


≪独立燃焼説≫
 火が媒介物[人つけた新聞紙等]を離れて目的物に燃え移り、独立に燃焼する状態に達したこと。
[理由]
・放火罪は公共危険罪であり、目的物が独立燃焼するに至った時点で公共の安全に対する危険が現実化したといえる。→目的物の損壊を要せず、目的物の効用を喪失しなくても、放火罪が完成する。

≪燃え上がり説≫
 目的物が「燃え上がったこと」、つまり、目的物の重要な部分が燃焼を開始したこと。
[理由]
・独立燃焼説では既遂時期が早すぎ、中止未遂が成立する余地が著しく狭い。そこで、単なる目的物の燃焼ではなく、重要な部分の燃焼を要求すべきである。

≪効用喪失説≫
 火力により目的物の重要な部分を失い、その本来の効用を喪失したこと。
[理由]
・放火罪の財産犯としての性格を反映させるべきである。

≪毀棄説≫
 火力により目的物が毀棄罪にいう損壊の程度に達したこと。
[理由]
・「焼損」とは、本来、火力によって物を損傷するという意味である。
・物の効用が喪失するまで既遂に達しないとすると、公共危険罪としての性格が損なわれる。損壊の程度に達すれば、公共の安全に対する抽象的な危険が発生したと認められる。

 近年は、耐火性の建造物が増加しており、独立燃焼説の限界が問題になっている。
 耐火性の建造物では、独立に燃焼する状態に達しないまま有毒ガスの発生等により公共の危険が生じるからである。
 毀棄説によれば、目的物の燃焼の有無にかかわらず、火力による目的物の損壊の程度によって既遂を判断することができる。また、独立燃焼に至らなくても、延焼の危険が発生する程度に酸化し高温になった時点で既遂とすべきからであるとする見解も有力である。

<現住建造物等放火罪>

 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱抗を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処せられる[108条]。

 客体は、現住建造物又は現在する建造物等である。
 「建造物」とは、家屋その他これに類する工作物であって、屋根があり壁又は柱によって支持され、土地に定着して人の起居・出入に適する構造の物をいう。したがって、畳、建具は建造物には含まれず、器物損壊罪の客体となる。また、飛行機は、本罪の客体とはならない。

 「現住」、つまり現に住居に使用するとは、人が日常生活を営む場所として利用されていることを意味する。留守であっても「現住性」は失われない。
 例えば、家人全員を殺害してから、その家屋の放火行為に及ぶ場合には、家人全員が死亡した時点で、居住者がいなくなったことから、現住性が失われる。この場合は、非現住建造物等放火罪[109条]が成立する。

 「現在」、つまり現に人がいるとは、放火行為の当時その内部に人がいることをいう。人の生命・身体に対する危険性がこわめて高いので、重く処罰される。

 本罪の故意は、所定の建造物等について現住性又は現在性があること、及び放火によってその客体を焼損することの認識である。

<客体の1個性・独立性>

 複数の建物が廊下でつながっているような場合や、耐火建築物、マンションの非現住部分の1室などは、部分に着目すれば「非現住建造物」にみえるが、全体的にみると「現住建造物」にみえる場合がある。このような場合には、何を基準として客体の1個性・独立性を考えるべきかという問題がある。

 判例は、平安神宮社殿が放火された事件において、その社殿が回廊によって人の現住する社務所や守衛詰所を一周できる構造になっており、社務所等への延焼可能性があったことから、現住建造物等放火罪の成立を認めた。
 すなわち、「社殿は、その一部に放火されることにより全体に危険が及ぶと考えられる一体の構造であり、また、全体が一体として日夜人の起居に利用されていたものと認められる。そうすると、右社殿は、物理的に見ても、機能的に見ても、その全体が1個の現住建造物であったと認めるのが相当である」とした。

 また、マンション内のエレベータのかごに放火した事件において、エベレータ―は、マンションの各居住空間の部分とともに、一体となって住宅として機能し、現住建造物であるマンションを構成しているとして、現住建造物等放火罪を認めた。

<客体に関する判例[要旨]>
◆≪判例S25.12.14≫
 畳や建具等の家屋の従物が現住建造物等放火罪の客体となる建造物たる家屋の一部を構成するには、畳や建具等が単に家屋の一部に取り付けられているだけでは足りず、当該家屋を毀損しなければ取り外せない状態にあることを要する。したがって、取外しが自由な畳を焼損しても、本罪の既遂には達しない。

◆≪大判M45.3.12≫
 庁舎と独立した建造物である宿直室は、「人の住居に使用する」建造物である。

◆≪最判S24.6.28≫
 絶えず人が出入りするわけではない別棟の待合客用の離れ座敷になっている建造物であっても、営業上客が出入りし、起臥侵食の場所として使用されている場合は、現住建造物にあたる。

◆≪最判H9.10.21≫
 競売手続の進行を妨げる目的で、従業員を、休日以外の毎日交代で宿泊させていた家屋は、この従業員が旅行に連れ出され不在であっても、従業員が旅行から帰れば再びこの家屋での宿泊が続くと認識していた場合には、「現に人が居住に使用」する建造物にあたる。

<非現住建造物等放火罪>

 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱抗を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処せられる[109条1項]。
 上記の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の懲役に処せられる。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない[同条2項]。

 1項は、他人所有物の放火、2項は、自己所有物の放火である。
 自己所有物であっても、@差押えを受け、A物権を負担し、B賃貸し、C保険に付した場合は、他人所有物として扱われる[115条]。

 非現住建造物等放火罪が他人所有に係る場合は、抽象的危険犯であり、焼損をもって既遂となる。自己所有に係る場合には、公共の危険が発生しなければ処罰されない。「公共の危険」とは、一般不特定の多数人をして、他の建造物等に延焼する結果を発生するおそれがあると思わせるのに相当な状態をいう。

 本罪の故意は、他人所有の場合には、@他人の所有であること、A非現住・非現在であること、B放火して客体を焼損することの認識が必要である。自己所有の場合には、@が自己所有であることの認識である。
 判例は、自己所有の場合について、焼損の結果、公共の危険を発生させることまでの認識は不要としているものと考えられる。

<非現住建造物等放火罪に関する判例[要旨]
◆≪大判S7.5.5≫
 1人で居住する者が自己の住居に使用する他人の所有の建造物に放火した場合は、他人所有の非現住建造物の目的物に放火に該当する。

◆≪大判T6.4.13≫
 父母を殺害し、その後その死体のある家屋を焼損した場合、他に住居者や現住者がいないときは、非現住建造物等放火罪にあたる。

<建造物等以外放火罪>
 
 放火して、現住建造物等放火罪、非現住建造物等放火罪に規定する以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処せられる[110条1項]。
 上記の物が自己の所有に係るときは、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられる[同条2項]。

 本罪の客体は、例えば、自動車、航空機、畳、建具、産業廃棄物である。このような客体を放火により焼損し、公共の危険を生じさせた場合に限り、罰せられる。

 本罪の故意として、目的物の焼損の事実以外に、公共の危険が生じることの認識までも必要かどうかが問題となる。

 判例は、公共の危険が生じることの認識は不要であると解している。条文上「よって」公共の危険を生じさせとあることから、本罪は、公共の危険の発生という重い結果が生じた場合の結果的加重犯であるとし、結果の発生について認識を必要としないと解している。

<建造物等以外放火罪に関する判例[要旨]>

◆≪大判M44.2.24≫
 建造物等以外放火罪の「公共の危険」とは、一般不特定の多数人が、放火罪における現住建造物等や非現住建造物等に延焼するおそれがあると思わせるのに相当な状態をいう。

◆≪最判H15.4.14≫
 建造物等以外放火罪の「公共の危険」とは、放火罪における現住建造物等や非現住建造物等への延焼の危険のみに限られるものであはなく、不特定多数の人々の生命身体のみならず、建造物等以外の財産に対する延焼の危険をも含まれる。 

<延焼罪>

 自己所有に係る非現住建造物等放火罪又は、自己所有に係る建造物等以外放火罪を犯し、よって現住建造物等放火罪、他人所有に係る非現住建造物等放火罪に規定する物に延焼させたときは、3月以上10年以下の懲役に処せられる[111条1項]。

 自己所有に係る建造物等以外放火罪を犯し、よって、他人所有に係る建造物等以外放火罪の規定する物に延焼させたときは、3年以下の懲役に処せられる[同条2項]。

 いずれも結果的加重犯であり、所定の基本犯[109条2項・110条2項]が成立したことを要する。
 延焼の結果について認識がある場合には、その客体について放火罪が成立する。つまり、自己所有の自動車を放火により焼損する際に、人が現住する隣の住宅に延焼するかもしれないという認識があり、自動車を焼損した結果、隣の住宅まで延焼した場合には、現住建造物等放火罪[108条]が成立する。

<放火罪の罪数>

 数個の放火行為によって数個の現住建造物を焼損した場合、それが、1個の公共の危険を発生させたにすぎなければ、現住建造物等放火罪[108条]が1個だけ成立する。これは、放火罪の保護法益が第1次的には公共の安全だからである。

 現住建造物を焼損する目的で、非現住建造物を媒介として利用し、これに放火して焼損させたが、現住建造物には燃え移らなかったという場合、現住建造物等放火罪の未遂罪のみが成立する。
 この場合、既遂の非現住建造物等放火罪が成立するようにみえるが、これは重い現住建造物等放火未遂犯に吸収される。

 また、現住建造物に延焼させる目的で、自己所有の物置等に放火し、これを焼損するだけで終わったような場合も、現住建造物等放火罪の未遂罪のみが成立する。

 放火罪は、毀棄罪[損壊罪]としての性格を有する。現住建造物を焼損する場面で、家具等さまざまな器物を損壊していく過程を想像すれば、理解しやすい。放火による文書や器物等の損壊は放火罪の通常の因果の流れとして把握されているといえる。したがって、放火罪が成立するときには、放火による毀棄罪は、成立しない。

つづく・・・
ラベル:刑法各論
posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 11:58| Comment(0) | 刑法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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