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2012年02月22日

独学院 詐欺罪 財産的処分行為から

いつも通り参りましょう。

<財産的処分行為>

 詐欺罪が成立するには、相手方が錯誤に陥り、その錯誤にもとづいて相手方が「処分行為」を行うことを要する。
 財産的処分行為とは、欺く行為の相手方が錯誤にもとづいて財物「又は財産上の利益」を移転することをいう。財物の処分を、特に「交付」という。

 意思能力を欠く幼児等を欺いて財物を交付させても、「処分行為」[交付]を欠くために詐欺罪は成立せず、窃盗罪[235条]となる。
・客体が「財産上の利益」である場合、相手方の処分行為がないと、詐欺罪は不成立。「利益窃盗」として不可罰。

 処分行為[交付行為]は、財産について「処分の事実」と「処分の意思」から成る。詐欺利得罪[246条2項]の処分行為については、後述する。

<出題例>

 甲が、自己の氏名以外の文字を全く知らない乙に対し、甲の乙に対する債務を免除する旨記載された書面を手渡し、これが市役所に対する陳述書であると偽り、乙を誤信させて署名、押印させたうえ、乙からその書面の交付を受けた場合。→詐欺罪は成立しない。乙は、当該書面が甲の債務を免責する旨を記載したものであることを認識しておらず、「処分の意思・事実」に欠け、財産的処分行為と認められないからである。

 財産について処分しうる権限ないし地位のない者は、処分行為を行うことができないため、これを欺いても詐欺罪は成立しない。

 通常は、詐欺行為をした者に財物が交付されるが、「第三者」に対して交付させてもよい。この場合の第三者とは、行為者から受取を依頼された者など、行為者と特別の関係のある者に限られる。

<出題例>

「人を欺いて、自己以外の第三者に財物を交付させた場合には、詐欺罪が成立する余地はない。」というわけではない。

<詐欺罪も財産犯である以上、その成立要件として「財産上の損害の発生」が必要である。
 詐欺罪の「財産上の損害」の内容をいかに解するかについては、争いがある。

≪個別財産喪失説≫[通説・判例]・・・個別財産の喪失で足りる。財物の交付自体が損害。
≪全体財産減少説≫[少数説]・・・被害者の全体としての財産が減少することが必要。

 個別財産喪失説によると、財物の交付自体が財産上の損害といえる。よって、欺く行為が行われなければ財物を交付しなかったであろうと認められる場合において、被害者が財物を交付しさえすれば、「たとえ財物の交付に際して相当の対価が支払われていても」、詐欺罪が成立する。←[重要]

 例えば、100万円の財物を交付したとしても、その代わりに100万円の代金を受け取っていたのであれば、被害者の「全体としての財産」は減少していない。
 「全体財産説」とは、一方でマイナスがあっても、他方で対価が支払われる等プラスがあり、全体としてマイナスにならない場合には、詐欺罪は成立しないとする考え方である。

<出題例>

 Aは、Bに対し、単なる栄養剤をがんの特効薬であると欺いて販売し、代金の交付を受けた。この場合、「真実を知っていればBがAに代金を交付しなかったとしても、Aの提供した商品が、Bが交付した代金相当のものであれば、詐欺罪は成立しない」というわけではない。
→詐欺罪は成立する。相当の対価が支払われても、財物[=代金]を交付したこと自体が「損害」であると認められる。「真実を知っていればBがAに代金を交付しなかった」という事情のもとで、単なる栄養剤をがんの特効薬であると欺いて代金の交付を受けている以上、詐欺罪が成立する。

<詐欺罪の主観的要件>

 本罪の故意は、他人を欺いて財物[又は財産上の利益」を処分[交付]させることの表象・認容である。
 具体的には、@詐欺行為、A相手方の錯誤、B錯誤に基づく処分行為、C財物[又は財産上の利益]の移転、及び@からCについて相当な因果的関連性があることの認識である。また、故意以外に不法領得の意思が必要である。

<着手時期・既遂時期>

 詐欺罪の実行の着手時期は、人に対して欺く行為を開始した時点であり、財物が交付されてその占有が行為者又は第三者に移転した時点で既遂となる。

<詐欺利得罪>

 人を欺いて、財産上不法の利益を得た者、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処せられる[246条2項]。

 本罪は、欺く行為により他人の財産上の利益を取得することを内容とする犯罪である。
 例えば、債権者を欺いて債務を免除してもらう場合が当てはまる。1項詐欺罪と同様に処罰される。

 詐欺利得罪に関しても、@詐欺行為、A相手方の錯誤、B詐欺に基づく処分行為、C財産上不法な利益の移転という一連の要素から構成され、これらの間に相当な因果的関連性があることを要する。

 また、主観的には、人を欺いて財産上不法の利益を得ることの表象・認容[故意]と、不法領得の意思が必要である。

<詐欺利得罪の構成要件>

 「財産上の利益」とは、財物以外の財産的価値のある利益の一切をいう。
 例えば、「債務の免除」を承諾させること、「債務の弁済の一時猶予」のほか、無銭飲食、無賃乗車といったサービスの提供も含まれる。

 財産上の「不法の利益」とは、利益を得る手段の不法性をいい、財産上の利益が不法であるということではない。
 「処分行為」とは、欺く行為によって錯誤に陥った相手方が財産上の利益を移転することをいう。

≪財産的処分行為にあたる場合≫

 被害者が「○○を差し上げます」、「○○を売却したします」、「○○代金の支払を免除したします」、「○○代金の支払を3か月間猶予いたします」などの意思表示をした場合には、被害者の「財産的処分行為」があったと認められる。

・判例は、財産上不法の利益が、債務の支払を免れることであるとするには、相手方たる債権者を欺いて「債務免除の意思表示をさせること」と要し、単に逃走して事実上支払をしなかっただけで足りるものではないとした。

・宿泊客が代金を踏み倒す意思で、「ちょっと散歩に出かけてくる」と言って外出し、旅館主がこれを見送ったという場合には、代金を免除するという意思表示、つまり処分行為がないために詐欺利得罪は成立しないとされる。
 この場合は、「利益窃盗」となるが、刑法には利益窃盗を処罰する規定がないため、不可罰となる。

<出題例>

 タクシーで目的地に着き、運賃の支払を求められた際に所持金がないことに気付いたAは、支払を免れようと考え、「このビル内にいる友人から金を借りてきて、すぐに支払う。」などと嘘を言ったところ、タクシー乗務員は、Aの言葉を信じて運賃を受け取らずにAを降車させた。
→Aには詐欺利得罪が成立する。タクシー乗務員は、錯誤に陥った結果、ただちに料金を請求することができるのにしないという「黙示の処分行為」を行ったとみることができるからである。

<無銭飲食>

[1]当初から代金を支払う意思がなく、飲食物を注文して飲食した場合
 この場合、飲食物という「財物」に対する詐欺利得罪[246条1項]の成否が問題となる。
 代金を支払う意思がないことを隠して注文する行為が、「欺く行為」にあたる。
 これにより、相手方を欺いて錯誤に陥らせ、飲食物という「財物」を「交付」させることによって、詐欺取財罪が成立する[246条1項]。

[2]飲食した後に代金を踏み倒そうと思いつき、詐欺的手段により支払を免れた場合
 この場合、飲食物の代金支払債務を免れるという「財産上・・・利益」に対する詐欺利得罪[246条2項]の成否が問題となる。

 詐欺利得罪が成立するには、行為者が相手方の「処分行為」によって財産上不法な利益を得ることを要する。相手方が「処分行為」をし、財産上の利益が移転した時点で「既遂」となる。相手方の「処分行為」があったと認められない場合には、「利益窃盗」として不可罰となる。

<例1> すきを見て逃げる

 Xは、店の主人が気づかないうちに、裏口からサッと逃げた。→Xには詐欺罪は成立せず、不可罰。食い逃げ。店の主人の「処分行為」がないので、詐欺利得罪は成立しない。「利益窃盗」として不可罰となる。

<例2>

 Xは、支払うつもりがないのに、店の主人に「後で支払う」と告げ、その了承を得た上で店の外に出て、そのまま逃亡した。
→Xには詐欺利得罪が成立する。代金支払債務の一時猶予。判例によると、これも「財産上・・・の利益」にあたる。

<例3> 「知人を見送る」と言って逃げる

 Xは、宿泊・飲食をした後、主人に「知人を見送る」と嘘を言い、その了承を得た上で店先に出て、そのまま逃亡した。
→Xには詐欺罪は成立せず、不可罰。この事例では、店の主人がXの外出を承認しておらず[「店先まで行くだけ」と誤信していた]「財産上の利益」を移転していない[=「処分行為」を行っていない]と評価されたと考えられる。

<キセル乗車とは何か>

 キセル乗車とは、交通機関を使って「A→B→C→D」に移動する場合において、「A→B」間の乗車券と「C→D」間の乗車券を用いて、途中の「B→C」間の運賃を不正に免れることをいう。キセル乗車は、自動改札機の無い時代にしばしば鉄道で行われた。

 一般に、キセル乗車をした者には詐欺利得罪[246条]が成立すると考えられるが、ただ、具体的に、その「欺く行為」「処分行為」「財産上の利益」「既遂時期」をどのように捉えるかについては、争いがあり、「乗車駅基準説」と「下車駅基準説」が対立する。

≪乗車駅基準説≫

 「乗車駅」の改札係員を欺いて「輸送の利益」を得たと考えて詐欺利得罪[246条2項]の成立を認める見解

≪下車駅基準説≫

 「下車駅」の改札係員を欺いて「不足運賃支払債務」を免れたと考えて詐欺利得罪[246条2項]の成立を認める見解

※自動改札機が導入された鉄道においては、キセル乗車を行うことは困難になった。

<乗車駅基準説による解釈>

@欺く行為

 キセル乗車をする意思を隠して、改札係員に「AからB」間の乗車券を提示して、乗車駅Aの改札を通過するという行為を、「欺く行為」と捉える。この行為によって、「乗車駅Aの改札係員」を「錯誤」に陥らせたとみる。

A処分行為と財産上の利益

 乗車駅Aの改札係員がキセル行為者に改札口の通過・入場を許したこと、および鉄道会社職員による鉄道運送役務の提供を、「処分行為」とみる。

B既遂時期

 キセル行為者が「輸送の利益を得た時点」、すなわち「電車が動き始めた時点」で詐欺利得罪が既遂となる。

<乗車駅基準説の弱点>

@ 例えば、Xが、キセル乗車の意思で「AからB」間の乗車券をA駅改札係員に提示して入場し、乗車したものの、途中で気が変わり、結局B駅で下車した場合にも、詐欺既遂犯が成立することになってしまう。

A 例えば、Xが、下車する際には運賃を精算するつもりで「AからB」間の乗車券を提示して入場したが、乗車後、キセル乗車の意思が生じ、D駅で「CからD」間の乗車券を提示して改札口を出たという場合には、詐欺罪が成立しないことになってしまう。

B キセル行為者は、乗車駅の改札口を通過して入場する際に、正規の乗車券・定期券を示している以上、これを通過させた改札係員に「錯誤」はなく、これに対する「欺く行為」はない。

C 乗車駅改札係員は単に駅構内への入場を許したにすぎず、輸送役務の提供という処分行為を行ったとみるのは難しい。輸送役務の提供という処分行為は、輸送を担当した乗員が行ったとみるべきであるが、そうすると、「欺かれた者」と「処分行為者」が一致しないことになってしまう。

※「処分行為者」と「被害者」が異なっても良いとされるが、「欺かれた者」と「処分行為者」は常に一致していなければならない[重要]

<下車駅基準説による解釈>

@ 欺く行為

 下車駅改札口において、不足運賃を精算しなければならないにもかかわらず、そのことを隠して「CからD」間の乗車券を提示して改札口を出る行為を、「欺く行為」と捉える。この行為によって、下車駅Dの改札口係員を錯誤に陥らせたとみる。

A 処分行為と財産上の利益

 下車駅改札口係員が不足運賃の支払をうけることなくキセル行為者の通過を許した行為を、「処分行為」とみる。不足運賃の支払を免れることを「財産上の利益」と捉える。

<下車駅基準説の弱点>

 キセル行為者が下車駅改札口を通過して外へ出るに際して、下車駅改札口係員が不足運賃支払債務を免除するなどの「処分行為」を行ったとみるのは難しい。
 下車駅の改札口係員は、キセル行為者に不足運賃の未払いがあることを知りながら改札口を出ることを許したというわけではなく、「債務免除の意思」を表示したとは認められないからである。

つづく・・・
タグ:刑法各論
posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 11:02| Comment(2) | 刑法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私にとって大変貴重な記事でありました。

私は、債務名義に基づく債務を放置している債務者を<詐欺利得罪>で告訴したいと思っています。
つきましては、先生のご指導が仰ぎたいのです。
このような個別のお願いは叶わないものでしょうか。
宜しくお願い申しあげます。
Posted by 永井美材 at 2013年11月27日 09:18
 永井美材さん、コメントありがとうございます。

 私は単なる書生でありますので、ご期待にこたえることができません。

 申し訳ございません。

 今後もこのブログがなにかの役にたつことがありましたら、この上ない喜びでございます。
Posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 2013年11月27日 18:10
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