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2012年02月21日

独学院 詐欺罪から

参りましょう。

<詐欺罪>

[1]人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処せられる[246条1項]。また、人を欺いて、財産上不法の利益を得た者、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処せられる[246条2項]。
 前者を後者と区別して、「詐欺取財罪」とか「1項詐欺罪」といい、後者を「詐欺利得罪」とか「2項詐欺罪」という。

 詐欺罪及び恐喝罪は、窃盗罪及び強盗罪とは次の点で異なる。
≪詐欺罪・恐喝罪≫・・・相手方の瑕疵ある意思に基づいて、財物を取得する。
≪窃盗罪・強盗罪≫・・・相手方の意思に反して、財物を取得する。

 詐欺罪は、恐喝罪とは次の点で異なる。
≪詐欺罪≫・・・欺く行為によって相手方を錯誤に陥らせるという手段をとる。
≪恐喝罪≫・・・暴行・脅迫によって相手方を畏怖させて、財物を取得するという手段をとる。

[2]詐欺罪の保護法益は、個人の財産である。
 個人の財産と無関係な利益を「欺く行為」によって侵害しても、詐欺罪は成立しない。

・結婚すると偽って貞操を奪っても、詐欺罪は成立しない。いわゆる「結婚サギ」は、結婚すると偽って「財産を騙し取る」からこそ詐欺罪になる。

<国・地方公共団体に対する詐欺罪の成否>
・肯定説[判例・通説]
 国・地方公共団体も財産権の主体となりうる以上、その財産権を侵害した場合には、国・地方公共団体に対する詐欺罪も成立する。
・否定説[少数説]
 国・地方公共団体に対する詐欺的行為は「公共的法益」に向けられており、詐欺罪の保護法益である「個人の財産」には向けられていない。よって、国・地方公共団体に対する詐欺罪は成立しない。

≪詐欺罪の成立が肯定された事例≫

 配給物資を騙し取って受け取った行為、国有地を騙して買受けた行為、生活保護の不正受給、健康保険証の不正交付

≪詐欺罪の成立が否定された事例≫

 判例は、旅券や印鑑証明書等の不正取得については、詐欺罪の成立を否定した。ただ、これらについて詐欺罪の成立が否定されたのは、公共的法益に対して向けられた行為だからという理由ではなく、旅券や印鑑証明書に財産的価値がなく「財物」にあたらないという理由によると解されている。

<詐欺罪の構成要件>

 本罪の行為は、人を欺いて財物を交付させること、つまり、騙して財物を交付させることである。具体的には、@欺く行為、A相手方の錯誤、B錯誤に基づく処分行為[交付行為]、C財物の移転があり、かつ、@→A→B→Cの過程に因果関係があることを要する。

@→A欺く行為に「よって」相手方を錯誤に陥れること
A→B錯誤に陥ったことに「よって」、財産的処分行為をしたこと
B→C財産的処分行為に「よって」、財物又は財産上の利益を取得したこと

平成7年改正前は、条文上「欺いて」は「欺罔して」となっていたため、欺罔行為といった。

<詐欺罪の客体>

 本罪の客体である「財物」には、動産のほか不動産も含まれる。
 財物は、原則として、「他人の財物」であることを要するが、「自己の財物」であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守する物であるときは、他人の財物とみなされる[251条242条]。また、電気は財物とみなされる251条・245条]。

<各種証明書の不正取得>

 判例は、健康保険証、簡易生命保険書の不正取得については詐欺罪の成立を肯定しているが、印鑑証明書や旅券の不正取得については詐欺罪の成立を否定している。

 国・地方公共も財産権の主体になりうる以上、欺く行為によってその財産権を侵害すれば、詐欺罪が成立しうる。ただ、その証明書を発行することが受給者に何らかの財産的利益を移転するものではないときには、「財物」にはあたらず、詐欺罪は成立しない。結局、ポイントとなるのは、「その証明書の取得によって、行為者に財産的利益が移転するのか否か」である。

≪旅券≫・・・一定の資格について官庁の証明を受けさせるものにすぎず、「財物」にはあたらない。
≪健康保険証≫・・・健康保険証があることにより、事実上医療費の一部を免れることができるので、一定の財産的価値を有すると評価しうる。よって、「財物」にあたる。

<各種証明書の不正取得 出題例>

 Aは、旅券発給の事務に従事する公務員Bに対し、内容虚偽の申立てをしてBを欺き、自己名義の旅券の交付を受けた。この場合、「真実を知っていればBがAに旅券を発給しなかったとすれば、詐欺罪が成立する」というわけではない。→詐欺罪は成立しない。これは、旅券は、一定の資格について官庁の証明をうけさせるものにすぎず、「財物」にあたらないからだと考えられている。

 Aは、簡易生命保険契約の事務に従事する係長Bに対し、被保険者が傷病により療養中であることを秘し、健康であると欺いて契約を申込み、簡易生命保険契約を締結させて、その保険証書の交付を受けた。この場合、真実を知っていれば、BがAに保険証書を交付しなかったとすれば、詐欺罪が成立する。→詐欺罪は成立する。簡易生命保険書は、国家に対する保険金請求権が存在することを証明する文書である。
 
 もちろん、欺く行為によって生命保険金を受ければ詐欺罪が成立する。同判決は、その前段階の、「欺く行為によって保険証書を取得した時点」で、詐欺罪が成立するとしたのである。

 簡易生命保険証書の発行は、国の保険金給付義務を発生させるものであって、単なる証明を超えて財産的利益の移転を伴うものと言え、簡易生命保険書はそれ自体が財産的価値をもち、「財物」にあたる。

<欺く行為〜「機械」に対しては×>

 詐欺罪の実行行為は、人を「欺く行為」である。欺く行為は、財物の交付[処分行為]に向けて人を錯誤に陥らせるものであることを要する。

[1]欺く行為は、「人」に対して向けられたものでなければならず、「機械」に対して詐欺的行為を行っても、詐欺罪は成立しない。
 例えば、盗んだキャッシュカードを使ってATMで現金を引き出す行為は、詐欺罪ではなく、窃盗罪が成立する。

ATMの管理者[=銀行]の占有する金銭を、その意思に反して取得したことになるから。

<そもそも「欺く行為」がなければ、詐欺罪X>

 Aは、所持金がないにもかかわらず、係員が出入り口で客にチケットの提示を求めて料金の支払いを確認している音楽会場でのコンサートを聴きたいと考えて、人目につかない裏口から会場に忍び込み、誰にも見とがめられずに客席に着席してコンサートを聴いた。Aの行為について詐欺罪は成立しない。

→そもそも「欺く行為」が存在しないので、詐欺罪は成立しない。また、財産的処分行為もない「財産的処分行為については後述]。

<欺く行為〜不作為でも○>

 欺く行為は、作為・不作為を問わない。
 不作為による詐欺行為の例としては、「つり銭詐欺」がある。

 たとえば、買主Aが売主Bから物品を購入してつり銭を受け取ったとする。この場合に、買主Aが売主Bの差し出したつり銭が多すぎることに気づきながら、そのまま黙って受け取ると、詐欺罪[246条1項]が成立すると解されている。

 買主Aは、売主Bの差し出したつり銭が多すぎることに気付いた場合、多すぎることを告げるべき作為義務[=告知義務]を負う。それにもかかわらず告げなかったという不作為が「欺く行為」にあたるからである。

※ これに対し、「買主つり銭を受け取る時点ではそれが多すぎることに気づかず、家に帰ってからつり銭が多いのに気付いたものの、そのまま返還しなかった」という場合には、詐欺罪は成立しない。占有離脱物横領罪[245条]が成立する。→つり銭の占有の移転が相手方の錯誤を利用して意図的になされたものではなく、偶然に自己の下に占有の移転してきた物を領得したにすぎないからである。

<欺く行為〜財産的処分行為に向けたもの>

 欺く行為は、人の財産的処分行為に向けられてたものでなければならない。欺く行為の相手方は、財産的処分行為を行う権限ないし地位を有する者[「処分権者」]でなければならない。

 甲が、乙作成名義の不動産売渡証書その他登記の申請に必要な書類を偽造し、これらを行使して登記官を欺き、乙所有の不動産につき乙から甲に対する所有権移転の登記をさせた場合→詐欺罪は成立しない。登記官は、不動産を処分しうる権限ないし地位をもたないからである。

 甲が、友人乙の住居するマンションに赴き、管理人丙に対し、「乙から頼まれてきた」旨うそを言って誤信させ、乙の居室のカギを開けさせて室内からテレビを搬出した場合→詐欺罪は成立しない。管理人丙は、乙のテレビについての「処分権者」ではないからである。

<横領行為を行うにあたって、人を欺く手段が用いられた場合>

 例えば、横領行為によって得られた財物[財産上の利益]の返還を求められた際に、嘘をいって返還を免れた場合である。

 この場合、人を欺く手段は「横領行為を完成させるための手段」として行われるにすぎないし、また、相手方の財産的処分行為も認められないと解されるからである。

 他人から借りたカメラを自分のものにするため、持主に対してそのカメラが盗まれたと嘘をついて、これを返さなかった場合→詐欺罪は成立しない。横領罪が成立する。本問の嘘は、「横領罪を完成させるための手段」にすぎない。

 預かっていた財物を横領するため、その財物を自己に預けた人に嘘をついて返還を免れ、これを領得した。→この場合、「横領罪と詐欺の両罪が成立する」というわけではない。

つづく・・・
ラベル:刑法各論
posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 14:11| Comment(0) | 刑法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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