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2012年02月29日

独学院 放火罪の保護法益から

参りましょう。

<放火罪の保護法益>

 放火罪は、放火によって住居、建造物等を焼損し、公衆の生命・身体・財産に対して危険を生じさせる犯罪である。
 保護法益は複合的なものであり、具体的には次のように解されている。

 まず、本罪は公共危険罪である。したがって、不特定又は多数人の生命・身体・財産の安全が第1次的な保護法益である。

 また、本罪は、放火の目的物である住居・建物等について、人が現に住居に使用[現在]し、又は現に人がいる[現在]かどうかによって法定刑を異にしている。これは、本罪が2次的には人の生命・身体の安全を保護法益としているからであると説明される。

 すなわち、人が現住する建造物に対する放火[現住建造物等放火罪]の刑は、死刑、無期懲役又は5年以上の懲役であり、殺人罪[死刑、無期懲役又は5年以上の懲役]と刑が等しいのに比し、人が現住していない建造物に対する放火[非現住建造物等放火罪]については、死刑も無期懲役もなく下限も懲役2年である。これほどの刑の軽重が設けられたのは、本罪が人の生命・身体に対する罪としての性格を有するからに他ならない。

 さらに、本罪は、財産犯的性格、特に毀棄罪[損壊罪]の性格をも持ち合わせている。目的物が自己所有であるか他人所有であるかによって法定刑に大きな差異を設けているからである。そのため本罪は、人の財産をも保護法益とするものであるといえる。

<放火罪の種類>

 放火罪には、主に次のような種類があり、それぞれ放火の目的物が何であるかによって区別される。

@ 現住建造物等放火罪[108条]・・・現に人が住居に使用し、又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱抗[こうこう]
A 非現住建造物等放火罪[109条]・・・現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱抗
B 建造物等以外放火罪[110条]・・・@A以外の物[例えば、自動車、人の現在しない電車]

 非現住建造物等放火罪及び建造物等以外放火罪については、その目的物が、他人の所有するものであるか[他人所有]、自己の所有する物であるか[自己所有]によって法定刑に差が設けられている。
 また、非現住建造物等放火罪が自己所有の物に係る場合、及び建造物等以外放火罪[他人所有・自己所有]については、放火によって目的物が焼損するだけでなく、公共の危険を生じさせることが必要である。

<抽象的危険犯と具体的危険犯>

 現住建造物等放火罪及び非現住建造物等放火罪[他人所有]については、放火により目的物が焼損すればよく、具体的な公共の危険の発生は不要である[抽象的危険犯]。所定の目的物に対する放火により、公共の危険が発生したものと擬制されるのである。

 これに対し、非現住建造物等放火罪[[自己所有]及び建造物以外放火罪については、放火による焼損だけでなく、具体的に公共の危険の発生が必要である[具体的危険犯]。
 判例は、110条に関して、「公共の危険」とは、一般不特定の多数人をして、他の建造物等に延焼する結果を発生するおそれがあると思わせるのに相当な状態をいう。

<現住者等の承諾の効果>

 放火罪は、公共危険罪であるとともに、建造物等に現在する人の生命・身体に対する罪としての側面や財産犯的側面も有することから、現住者等が承諾し、又は現住者等が行為者になることによって、成立する犯罪が異なる場合がある。

 建造物等の現住者が放火を承諾すると、現住建造物等放火罪[108条]ではなく、非現住建造物放火罪[109条]となる。これは、放火罪が人の生命・身体に対する罪としての側面を有するため、現住者の承諾があれば、人の現住しない建造物等と同視されることになるからである。

 なお、放火犯人が1人で住居している場合には、現住者の承諾があったのと同じであるから、非現住建造物等放火罪として処断される。
 また、建造物等の所有者が放火を承諾すると、他人所有物の放火ではなく、自己所有物の放火として扱われる。これは、放火罪が財産犯的性格を有するからである。
 なお、現住建造物等放火罪[108条]については、その犯罪性が重大であることから、その建造物等に現住していない所有者が承諾していても、何ら犯罪の成否に影響を及ぼさない。

<放火・焼損の意味>

 「放火」とは、目的物の焼損を生ぜしめることをいい、それによって目的物が「焼損」に至れば既遂となる。

◆「焼損」の意義
≪独立燃焼説≫[最判]
 火が媒介物[火を付けた新聞紙等]を離れて目的物に燃え移り、独立に燃焼する状態に達したこと。

≪燃え上がり説≫
 目的物が「燃え上がったこと」、つまり、目的物の重要な部分が燃焼を開始したこと

≪効用喪失説≫
 火力により目的物の重要な部分を失い、その本来の効用を喪失したこと

≪毀棄説≫
 火力により目的物が毀棄罪にいう損壊の程度に達したこと


≪独立燃焼説≫
 火が媒介物[人つけた新聞紙等]を離れて目的物に燃え移り、独立に燃焼する状態に達したこと。
[理由]
・放火罪は公共危険罪であり、目的物が独立燃焼するに至った時点で公共の安全に対する危険が現実化したといえる。→目的物の損壊を要せず、目的物の効用を喪失しなくても、放火罪が完成する。

≪燃え上がり説≫
 目的物が「燃え上がったこと」、つまり、目的物の重要な部分が燃焼を開始したこと。
[理由]
・独立燃焼説では既遂時期が早すぎ、中止未遂が成立する余地が著しく狭い。そこで、単なる目的物の燃焼ではなく、重要な部分の燃焼を要求すべきである。

≪効用喪失説≫
 火力により目的物の重要な部分を失い、その本来の効用を喪失したこと。
[理由]
・放火罪の財産犯としての性格を反映させるべきである。

≪毀棄説≫
 火力により目的物が毀棄罪にいう損壊の程度に達したこと。
[理由]
・「焼損」とは、本来、火力によって物を損傷するという意味である。
・物の効用が喪失するまで既遂に達しないとすると、公共危険罪としての性格が損なわれる。損壊の程度に達すれば、公共の安全に対する抽象的な危険が発生したと認められる。

 近年は、耐火性の建造物が増加しており、独立燃焼説の限界が問題になっている。
 耐火性の建造物では、独立に燃焼する状態に達しないまま有毒ガスの発生等により公共の危険が生じるからである。
 毀棄説によれば、目的物の燃焼の有無にかかわらず、火力による目的物の損壊の程度によって既遂を判断することができる。また、独立燃焼に至らなくても、延焼の危険が発生する程度に酸化し高温になった時点で既遂とすべきからであるとする見解も有力である。

<現住建造物等放火罪>

 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱抗を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処せられる[108条]。

 客体は、現住建造物又は現在する建造物等である。
 「建造物」とは、家屋その他これに類する工作物であって、屋根があり壁又は柱によって支持され、土地に定着して人の起居・出入に適する構造の物をいう。したがって、畳、建具は建造物には含まれず、器物損壊罪の客体となる。また、飛行機は、本罪の客体とはならない。

 「現住」、つまり現に住居に使用するとは、人が日常生活を営む場所として利用されていることを意味する。留守であっても「現住性」は失われない。
 例えば、家人全員を殺害してから、その家屋の放火行為に及ぶ場合には、家人全員が死亡した時点で、居住者がいなくなったことから、現住性が失われる。この場合は、非現住建造物等放火罪[109条]が成立する。

 「現在」、つまり現に人がいるとは、放火行為の当時その内部に人がいることをいう。人の生命・身体に対する危険性がこわめて高いので、重く処罰される。

 本罪の故意は、所定の建造物等について現住性又は現在性があること、及び放火によってその客体を焼損することの認識である。

<客体の1個性・独立性>

 複数の建物が廊下でつながっているような場合や、耐火建築物、マンションの非現住部分の1室などは、部分に着目すれば「非現住建造物」にみえるが、全体的にみると「現住建造物」にみえる場合がある。このような場合には、何を基準として客体の1個性・独立性を考えるべきかという問題がある。

 判例は、平安神宮社殿が放火された事件において、その社殿が回廊によって人の現住する社務所や守衛詰所を一周できる構造になっており、社務所等への延焼可能性があったことから、現住建造物等放火罪の成立を認めた。
 すなわち、「社殿は、その一部に放火されることにより全体に危険が及ぶと考えられる一体の構造であり、また、全体が一体として日夜人の起居に利用されていたものと認められる。そうすると、右社殿は、物理的に見ても、機能的に見ても、その全体が1個の現住建造物であったと認めるのが相当である」とした。

 また、マンション内のエレベータのかごに放火した事件において、エベレータ―は、マンションの各居住空間の部分とともに、一体となって住宅として機能し、現住建造物であるマンションを構成しているとして、現住建造物等放火罪を認めた。

<客体に関する判例[要旨]>
◆≪判例S25.12.14≫
 畳や建具等の家屋の従物が現住建造物等放火罪の客体となる建造物たる家屋の一部を構成するには、畳や建具等が単に家屋の一部に取り付けられているだけでは足りず、当該家屋を毀損しなければ取り外せない状態にあることを要する。したがって、取外しが自由な畳を焼損しても、本罪の既遂には達しない。

◆≪大判M45.3.12≫
 庁舎と独立した建造物である宿直室は、「人の住居に使用する」建造物である。

◆≪最判S24.6.28≫
 絶えず人が出入りするわけではない別棟の待合客用の離れ座敷になっている建造物であっても、営業上客が出入りし、起臥侵食の場所として使用されている場合は、現住建造物にあたる。

◆≪最判H9.10.21≫
 競売手続の進行を妨げる目的で、従業員を、休日以外の毎日交代で宿泊させていた家屋は、この従業員が旅行に連れ出され不在であっても、従業員が旅行から帰れば再びこの家屋での宿泊が続くと認識していた場合には、「現に人が居住に使用」する建造物にあたる。

<非現住建造物等放火罪>

 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱抗を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処せられる[109条1項]。
 上記の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の懲役に処せられる。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない[同条2項]。

 1項は、他人所有物の放火、2項は、自己所有物の放火である。
 自己所有物であっても、@差押えを受け、A物権を負担し、B賃貸し、C保険に付した場合は、他人所有物として扱われる[115条]。

 非現住建造物等放火罪が他人所有に係る場合は、抽象的危険犯であり、焼損をもって既遂となる。自己所有に係る場合には、公共の危険が発生しなければ処罰されない。「公共の危険」とは、一般不特定の多数人をして、他の建造物等に延焼する結果を発生するおそれがあると思わせるのに相当な状態をいう。

 本罪の故意は、他人所有の場合には、@他人の所有であること、A非現住・非現在であること、B放火して客体を焼損することの認識が必要である。自己所有の場合には、@が自己所有であることの認識である。
 判例は、自己所有の場合について、焼損の結果、公共の危険を発生させることまでの認識は不要としているものと考えられる。

<非現住建造物等放火罪に関する判例[要旨]
◆≪大判S7.5.5≫
 1人で居住する者が自己の住居に使用する他人の所有の建造物に放火した場合は、他人所有の非現住建造物の目的物に放火に該当する。

◆≪大判T6.4.13≫
 父母を殺害し、その後その死体のある家屋を焼損した場合、他に住居者や現住者がいないときは、非現住建造物等放火罪にあたる。

<建造物等以外放火罪>
 
 放火して、現住建造物等放火罪、非現住建造物等放火罪に規定する以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処せられる[110条1項]。
 上記の物が自己の所有に係るときは、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられる[同条2項]。

 本罪の客体は、例えば、自動車、航空機、畳、建具、産業廃棄物である。このような客体を放火により焼損し、公共の危険を生じさせた場合に限り、罰せられる。

 本罪の故意として、目的物の焼損の事実以外に、公共の危険が生じることの認識までも必要かどうかが問題となる。

 判例は、公共の危険が生じることの認識は不要であると解している。条文上「よって」公共の危険を生じさせとあることから、本罪は、公共の危険の発生という重い結果が生じた場合の結果的加重犯であるとし、結果の発生について認識を必要としないと解している。

<建造物等以外放火罪に関する判例[要旨]>

◆≪大判M44.2.24≫
 建造物等以外放火罪の「公共の危険」とは、一般不特定の多数人が、放火罪における現住建造物等や非現住建造物等に延焼するおそれがあると思わせるのに相当な状態をいう。

◆≪最判H15.4.14≫
 建造物等以外放火罪の「公共の危険」とは、放火罪における現住建造物等や非現住建造物等への延焼の危険のみに限られるものであはなく、不特定多数の人々の生命身体のみならず、建造物等以外の財産に対する延焼の危険をも含まれる。 

<延焼罪>

 自己所有に係る非現住建造物等放火罪又は、自己所有に係る建造物等以外放火罪を犯し、よって現住建造物等放火罪、他人所有に係る非現住建造物等放火罪に規定する物に延焼させたときは、3月以上10年以下の懲役に処せられる[111条1項]。

 自己所有に係る建造物等以外放火罪を犯し、よって、他人所有に係る建造物等以外放火罪の規定する物に延焼させたときは、3年以下の懲役に処せられる[同条2項]。

 いずれも結果的加重犯であり、所定の基本犯[109条2項・110条2項]が成立したことを要する。
 延焼の結果について認識がある場合には、その客体について放火罪が成立する。つまり、自己所有の自動車を放火により焼損する際に、人が現住する隣の住宅に延焼するかもしれないという認識があり、自動車を焼損した結果、隣の住宅まで延焼した場合には、現住建造物等放火罪[108条]が成立する。

<放火罪の罪数>

 数個の放火行為によって数個の現住建造物を焼損した場合、それが、1個の公共の危険を発生させたにすぎなければ、現住建造物等放火罪[108条]が1個だけ成立する。これは、放火罪の保護法益が第1次的には公共の安全だからである。

 現住建造物を焼損する目的で、非現住建造物を媒介として利用し、これに放火して焼損させたが、現住建造物には燃え移らなかったという場合、現住建造物等放火罪の未遂罪のみが成立する。
 この場合、既遂の非現住建造物等放火罪が成立するようにみえるが、これは重い現住建造物等放火未遂犯に吸収される。

 また、現住建造物に延焼させる目的で、自己所有の物置等に放火し、これを焼損するだけで終わったような場合も、現住建造物等放火罪の未遂罪のみが成立する。

 放火罪は、毀棄罪[損壊罪]としての性格を有する。現住建造物を焼損する場面で、家具等さまざまな器物を損壊していく過程を想像すれば、理解しやすい。放火による文書や器物等の損壊は放火罪の通常の因果の流れとして把握されているといえる。したがって、放火罪が成立するときには、放火による毀棄罪は、成立しない。

つづく・・・
タグ:刑法各論
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2012年02月27日

独学院 毀棄・隠匿の罪から

参りましょう。

<毀棄・隠匿の罪>

 毀棄・隠匿の罪は、公用文書等毀棄罪[258条]、私用文書等毀棄罪[259条]、建造物等損壊罪及び同致死傷罪[260条]、器物損壊等の罪[261条]、境界損壊罪[262条の2]、信書隠匿罪[263条]から成る。

 これらは、いずれも、「他人の財物の効用を害しその利用を妨げる罪」である。他人の財物を不法に領得する「領得罪」と異なり、単に利用を妨害するにとどまるため、刑が軽いと解されている。
 私用文書等毀棄罪[259条]、器物損壊等の罪[261条]、信書隠匿罪[263条]は、親告罪である[264条]。

<公用文書等毀棄罪>

 公務の用に供する文書または電磁的記録を毀棄した者は、3月以上7年以下の懲役に処せられる[258条]。

[1]客体
 「公務所の用に供する文書」とは、公務所において現に使用され、又は使用の目的で保管される文書をいう。
 「私文書であっても、警察が証拠物として保管中のもの」であれば、公務所が使用するための文書として、公用文書とされる。
 「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式等、人の知覚によって認識できない方式により作成された記録であって、電子計算機による情報処理の用に供せられるものをいう[7条の2]。例えば、不動産登記ファイル、住民登録ファイルがこれにあたる。

[2]行為
 「毀棄」とは、文書または電磁的記録の効用を害する一切の行為をいう。破り捨てる、印紙を剥離する等も毀棄罪である。

<出題例>

 市役所の課税台帳を閲覧中、その中の1枚を抜き取り、閲覧室内のくずかごに丸めて投げ捨てた。→公用文書等毀棄罪が成立する。公用文書を丸めて捨てることは、文書の効用を害する行為にあたるので、「毀棄」にあたる。

<私用文書等毀棄罪>

 権利又は義務に関する他人の文書または電磁的記録を毀棄した者は、5年以下の懲役に処せられる[259条]。
 「権利又は義務に関する」文書とは、権利・義務の存否・得喪・変更等を証明するための文書である。
 「他人の」文書とは、「他人名義の文書」という意味ではなく、「他人が所有する文書」という意味である。

<出題例>
 友人を訪れた際、同人に差し入れた自己名義の借用証書をほしいままに破り捨てた。→私用文書等毀棄罪が成立する。「自己名義」の文書ではあるが、「他人所有の文書」だから。

<建造物等損壊罪・同致死傷罪>

 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処せられる。よって人を死傷させた者は傷害の罪と比較して重い刑により処断される[260条]。

[1]「建造物」とは、屋根を有し障壁又は柱材により支えられている状態のもので、土地に定着し、人がその内部に出入りできるものをいう。

<出題例>
 他人の家の竹垣を切り倒した。→「建造物等損壊罪」は成立しない。竹垣は「建造物」にあたらない。本問の行為は「建造物等損壊罪」ではなく「器物損壊罪」にあたる。

[2]「他人の」とは、「他人の所有する」という意味である。

[3]「損壊」とは、物理的に損壊すること、又は「その他の方法」によって、それらの使用価値を滅却若しくは減損することをいう。

★物理的損壊「以外」の方法による場合でも、「損壊」にあたり得る。

 判例は、労働争議において、建造物の壁、窓ガラス、扉等に数千枚のビラを糊付けし、その建造物の効用を害した行為について、建造物等損壊罪が成立するとした。

<器物損壊罪・動物傷害罪>

 公用文書等毀棄罪、私用文書等毀棄罪、建造物等損壊罪及び同致死傷罪に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処せられる[261条]。

[1]本罪の客体は、「『公用文書・私用文書[電磁的記録を含む]、建造物、艦船』以外の物」である。公用文書等毀棄罪、私用文書等毀棄罪の客体にあたらない電磁的記録も含まれる。
「物」とは、財物のことである。「動物」も含まれる。

[3]「損壊」とは、物の本来の効用を失わせることをいう。物理的に毀損する行為に限られない。

★「物を物理的に壊す方法『以外』の方法」でも、「損壊」にあたりうる。

≪判例上、「損壊」にあたるとされたもの≫
・学校の校庭に杭を打ち込むなどして、保健体育の授業に支障を生じさせる行為
・街頭に設置された政党の候補者ポスターに「殺人者」と書かれたシールを貼り付ける行為
・飲食用のすき焼き鍋及びトックリに放尿する行為

「傷害」とは、動物を毀棄することをいう。「物理的に殺傷すること」だけでなく、[飼主にとっての]「動物としての効用を害する行為」を含む。
 例えば、動物をオリやカゴから「逃がす」行為も「傷害」にあたりうる[養魚池の鯉を逃がす行為について、大判M44.2.27]。

<自己の物の損壊等>

 自己のものであっても、差押を受け、物権を負担し、又は賃貸したものを損壊し、又は傷害したときは、私用文書等毀棄罪、建造物等損壊及び同致死傷罪、器物損壊罪等の例によって処罰される[262条]。
 本条は、差押債権者等の財産的利益をも併せて保護する趣旨である。

<境界損壊罪>

 境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる[262条の2]。

[1]趣旨
 本罪の趣旨は、土地の権利関係の確定に重要な意義を有する「境界の明確性」を保護することである。

[2]客体
 「境界標」とは、土地の境界を示す標識をいう。立木等の自然物でもよい。他人の物でも、自己の物でもよい。

[3]行為
 「損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにすること」

 本罪が成立するには、境界を認識することができなくなるという「結果の発生」が必要である。この結果が生じないときは、器物損壊罪[261条]が成立する。

<出題例>

 自己の所有地とこれに隣接する他人の所有地との境界に、自らの費用で埋設しておいた境界標を引き抜いて、境界を不明にした。→境界損壊罪が成立する。

つづく・・・
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2012年02月26日

独学院 接盗品等に関する罪から

参りましょう。

<盗品に関する罪>

 盗品その他財産に対する罪にあたる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処せられる[256条1項]。
 上記の物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処せられる[同条2項]。

≪盗品に関する罪の本質について≫

 盗品等に関する罪は、犯罪の被害者による被害物の追求回復を困難にする行為を罰するものである。すなわち、被害者の追求権を保護することを、その本質とする[追求権説]。
 もっとも、盗品等に関する罪は、本罪の犯罪を助成し誘発させたり、その分配にあずかるという意味で、「事後従犯的性格」を併せ持っていると解されている。

<盗品関与罪の主体>

 「本犯の正犯者[共同正犯者を含む。]」がみずから盗品等を処分するなどしても、不可罰的事後行為として罰せられなり。
 これは、本犯[窃盗罪]によって、盗品等の処分についても違法評価し尽くされており、新たな法益侵害がないと考えれられるからである。

<出題例>

 他人から宝石を預かっている者と共謀して当該宝石を処分することとし、自己において買受けた場合→盗品等に関する罪は成立しない。本犯の正犯者[共同正犯者を含む。]がみずから盗品等を処分するなどしても、不可罰的事後行為として罰せられない。

★これに対し、「本犯の教唆犯や幇助犯」が、窃盗犯人から盗品等を譲り受ける等の行為をすると、窃盗罪の教唆犯・幇助犯のほかに、盗品等に関する罪も成立する。
 窃盗教唆罪・幇助罪によって、その後の盗品等の処分まで違法評価し尽くされているとは言い難いからである。そして、教唆犯又は幇助犯と盗品等に関する罪とは併合罪[45条]。

 他人に窃盗を教唆し、その結果窃盗を実行した者から窃取した財物を買受けた場合→窃盗教唆罪と盗品等有譲受罪が成立し、両罪は併合罪[45条]となる。

<窃盗品等に関する罪の客体>

 盗品等に関する罪の客体は、「盗品その他財産に対する罪にあたる行為によって領得された物」であり、被害者が法律上追求することのできる物でなければならない[追求権説による説明]。

<客体〜財産犯によって領得された財物でなければならない>

 本罪の客体は、「財産に対する罪」、つまり窃盗罪、強盗罪、詐欺罪、恐喝罪又は横領罪によって領得された財物である。
 したがって、財産罪「以外」の犯罪の客体である偽造文書、偽造貨幣、賄賂、密輸品、賭博によって得た金銭、偽証の謝礼等は、盗品等に関する罪の客体とはなりえない。[超重要]

<客体〜本犯との関係>
「a」 本犯の行為は「構成要件該当性」「違法性」の要件を充たしていればよい。「有責性」の要件を欠く場合、刑が免除される場合、控訴事項が完成して起訴されない場合でもよい。条文上、「財産犯に『当たる』行為」とあるのは、その趣旨である。
 例えば、14歳未満の刑事未成年者[責任無能力者]によって盗まれた自動車も、「盗品」にあたる。

<出題例>

 親父から盗んできた物であることを知って、これを質受した場合→盗品保管罪[256条2項]が成立する。この場合、被害者が本犯者の直系尊属であるから、本犯者は「刑を免除」される[244条1項]。この刑法244条は「一身的処罰阻却事由」であって、本犯の行為は「構成要件該当性・違法性」に欠けるわけではない。

[b] 本犯は「既遂」に達していなければならない。例えば、窃盗を決意した者に依頼されて、その者が将来摂取すべき財物の売却をあっせんするしても、盗品有償譲受罪は成立しない。

<出題例>

 友人から窃盗の意思を打ち明けられ、盗品の買い取りを約束した場合→盗品等に関する罪は成立しない。本犯である財産犯が「既遂」に達していないからである。

<客体〜被害者が法律上追求することのできる物でなければならない>

 本罪の本質は「被害者の追求権を侵害すること」にあると解されている。よって、被害者が盗品等に対する法理上の追求権を失ったときには、本罪は成立しない。
 例えば、本犯の被害物が即時取得、添付などの対象となったときには、その物について盗品等に関する罪は成立しなくなる。

[a] 即時取得との関係

・「盗品や遺失物」については、第三者がその物を即時取得[民192条]した場合でも、盗難
・遺失の時から2年間は被害者がその物の回復を請求できるので[民193条]、被害者がこのような追求権を行使できる間は、本罪の客体となるとされる。

・「横領罪の被害品」については、第三者が即時取得した場合、2年間の回復請求の定め[民192条]は適用されない。即時取得によって被害者は追求権を失い、本罪の客体にはならない。

<出題例>

 横領罪の被害者が第三者により即時取得された場合には、これにより被害者の当該被害物に対する追求権は失われるから、以後、盗品等に関する罪は成立しない。→「横領罪の被害物」だから、民法193条の回復請求を問題にする必要はない。

[b] 被害者が取消権を行使する以前であっても、盗品等にあたる。

 本犯の行為が詐欺・恐喝の場合には、その盗品等の所有権は一応犯人に移転し、「取り消すことができる」にすぎない[民96条1項]。被害者が取消権を行使する以前には、その財物は「盗品等」にあたらないとも思える。
 しかし、被害者が取消しの意思表示をする以前にも、「取消権を行使した場合には、原状回復請求権を行使することができるという可能性」があり、その「可能性」を含む意味での法律上の追求権が認められることから、その物は盗品等に「あたる」と解されている。

<出題例>

 「本犯が詐欺罪の場合、欺罔による財産移転の意思表示を取り消す前には、被害者は、当該財産に対する追求権を有しないから、盗品等に関する罪は、成立しない。」というわけではない。→取消前であっても、回復を請求する「可能性」はあり、その可能性を含む意味での追求権は認められるから。

<盗品等の同一性>

 盗品等に関する罪の客体である「盗品等」は、被害者の追求権の及ぶものでなければならない。「盗んだ自動車を換金して得た金銭」などのように、「盗品等がその同一性を失った場合」には、被害者の追求権が及ばなくなるから、盗品等に関する罪は成立しない。

 しかし、「金銭などのように代替性を有するもの」については、それ自体が所有権の対象となるのではなく、金額又は一定の数量として所有権の対象となると解されており、例えば、盗品である金銭を両替して他の金銭に換えても、盗品性は失われないと解されている。

≪盗品等との同一性が失われる場合≫
・盗んだ金銭→カレーライスを御馳走
・盗品→金銭に換金
≪盗品等との同一性が失われない場合≫
・横領した紙幣→両替して得た金銭
・詐取した小切手→現金化して得た金銭

<出題例>

 本犯の被害物が同一性を失った場合には、被害者の当該被害物に対する追求権は失われるから、本犯の被害物の売却代金である金銭の贈与を受けても、盗品等に関する罪は、成立しない。→本犯の被害物の売却代金である金銭は、もはや本犯の被害物との同一性を失っているから、「盗品等」にはあたらない。

 「本犯の被害者が同一性を失った場合には、被害者の当該被害物に対する追求権は失われるから、本犯の被害物である紙幣を両替していた金銭の贈与を受けても、盗品等に関する罪は、成立しない。」というわけではない。→金銭を両替して得た金銭は、「盗品等」にあたる。

※ポイント
 「物→¥金銭」では盗品性「なし」、「¥金銭→¥金銭」、「小切手→¥金銭」では盗品性「あり」

<盗品等に関する罪の行為>
[1]「無償で譲り受け」るとは、代価を支払わないで取得することをいう。「単なる約束」では足りず、「盗品等の引渡し」が必要である。

[2]「運搬」とは、委託により盗品等の所在を移転することをいう。

★判例は、窃盗の被害者に警察への通報を断念させた上で、金銭を出させて盗品を被害者宅まで運搬した事案において、盗品の運搬は窃盗犯人の利益のためにその領得を継受したものであるとして、盗品等運搬罪の成立を認めた。

 追求権説に従えば、被害物を本犯の被害者宅に運搬している以上、被疑者の追求回復を困難にするものではなく盗品等に関する罪は成立しないとも思える。
 しかし、盗品が被害者宅に戻っても、その返還が犯人の利益のためになされた時には、「正常な回復ではない」から、盗品等に関する罪が成立すると解されている。

[3]「保管」とは、委託を受けて盗品等を保管することをいう。有償・無償を問わない。当初は盗品等であることを知らなかったものの、後に盗品等であることに気づいて保管を続けた場合には、それ以後について盗品等保管罪が成立する。

[4]「有償で譲り受け」るとは、代価を提供して取得することをいう。有償取得の契約を締結するだけでは足りず、「盗品等の引渡し」が必要である。

★盗品と知りつつ買受けた場合であっても、被害者に返還する目的で買い取った場合には、本罪は成立しない。

<出題例>

 被害者に返還する目的で、盗品と知りながこれを買い取った場合、盗品等に関する罪が「成立しない」。

[5]「有償の処分のあっせん」とは、盗品等について売買、交換、質入等、有償的処分をあっせんすることをいう。処分については有償であることを要するが、あっせん行為自体は有償でなくてもよい。
 あっせんをした事実があれば、あっせんにより売買等の契約が完成しなくても、盗品等有償処分あっせん罪は成立する。

※判例は、「本犯の被害者」を相手方として本犯の被害物の有償処分のあっせんをする場合であっても、「被害者による盗品等の正常な回復を困難にするばかりでなく、窃盗等の犯罪を助長し誘発するおそれのある行為であるから、刑法256条2項という盗品等の「有償の処分のあっせん」に当たる」とした。

<親族間の犯罪に関する特例>

・「配偶者との間又は直系血族、同居の親族若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する。[257条1項]
・「前項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。」[257条2項]

≪本条の趣旨≫

 配偶者や親族等が身内の財産犯人のために盗品等の処分を行うことは無理からぬ面があるので、期待可能性が減少することを考慮して、一身的に刑の免除を定めた者であると解されている[「一身的処罰阻却事由」という。]。

≪親族関係は、誰と誰との間にあればよいのか≫

 本特例は、一定の親族関係にある者は、本犯者を庇護したり、またその利益に関与することは無理からぬ面もあるとして定められたものであるから、そのような関係が認められる場合、すなわち、「盗品等罪の犯人」と「窃盗罪等の本犯者」との間に親族関係があった場合に適用されると解されている。
 典型的には、息子が盗みを働いてきた場合に、その息子をかばうために母親が盗品の処分をするといった場合である。

※これに対して、「盗品等罪の犯人」と「本犯の被害者」との間に親族関係があることを要すると解する見解もある。
 しかし、この見解は、「盗品等罪の犯人と被害者が親族関係にあることは偶然的である。」と批判される。

つづく・・・
posted by 94条2項の類推適用されずじまい at 19:29| Comment(0) | 刑法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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